たむ

濡れ髪剣法のたむのレビュー・感想・評価

濡れ髪剣法(1958年製作の映画)
3.6
『眠狂四郎』シリーズ全作鑑賞出来たので、雷蔵映画の人気シリーズを遡って『濡れ髪』シリーズの第一作です。
『眠狂四郎』にしても『大菩薩峠』にしても剣三部作にしても、ダークな雷蔵映画が続きましたが、市川雷蔵という役者の凄みは喜劇も悲劇も演じ切れる底なしの表現力です。
本作は、若殿が自らの身分を隠して、街に出て、成長する明朗時代劇。
笑えるシーンも沢山あり、クライマックスのチャンバラに向かっていく楽しい映画です。
身分の差を笑いの要素にして、世間知らずな若殿が自分は市井の人々からどう見られているのか、どんな生活をして何に困っているのか。
その人々と同じ立場と視点に立つ事でしかわからない、理解できないものがあることを描きます。
若殿が街に出るきっかけとなる姫を八千草薫さんが演じており、可憐ながら強い意志のある女性を演じて、魅力全開。
喜劇であり、社会派の時代劇があった日本映画の黄金時代。
その作劇術はどこに消えてしまったのか…そう思うと切なくもなってきますね。
たむ

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