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ハロルドとモード/少年は虹を渡るのleylaのレビュー・感想・評価

4.5
カルトな恋愛映画という予想を遥かに超えて、死生観や輪廻転生、ホロコーストやベトナム戦争についても感じさせる奥深い作品だった。なのに重くなく、シュールな映像やコメディ要素もあって面白い。

冒頭から70年代の空気感と音楽に惹きつけられて、2回続けて鑑賞。
79歳のモードの壮絶な過去を知った上で観ると彼女の言葉の重みと輝きが断然違ってくる。

とはいえ、劇中で過去のことに触れるシーンは少なく、遊園地のデート中での彼女の過去がわかるワンシーンは見逃さないよう要注意です。

根底にあるのはピュアで切ないラブストーリー。
裕福な19歳のハロルドは狂言自殺をしたり、他人の葬式に忍び込んだり、厭世観が漂う青年。ある葬式で、79歳のモードと出会い、やがてハロルドはモードに恋心を抱くようになる…。

👇ここからネタバレ含みます。




見ず知らずの人の葬儀に参列するのが趣味の2人。「1つの命が他者とつながっている」という思いで葬儀に参列するモードと、死んだようにしか生きられず葬儀に参列するハロルド。そんな2人は葬儀で出会う。死生観が正反対な2人の濃密な数日間が始まる…。

無免許で盗難車を運転したり、白バイを盗んだり、モードのハチャメチャな行動は、過去の壮絶な経験があったからこそ、今やりたいことを懸命に生きている表れ。
誰にも縛られず自由に生きる姿を、ハロルドに全身全霊で見せたかったんだと思う。

モードにとってハロルドは、人生最後の生きがいだったんではないかな。
この年齢差だからこそ、命のつながりを感じることができる。輪廻転生を思いました。

「生きがいを求めて懸命に生きろ」
「モラルに縛られて自分の人生をごまかすな」と語るモード。
そんなありがちな言葉も、人生を達観しているモードが言うと説得力がある。

ハロルドが年齢差に関係なくモードに惹かれていくのもわかるなぁ。ほんとにチャーミングなお婆ちゃんだもの。

マーガレットの花畑から戦没者の墓地へのシークエンスは、戦死者への思いと政府への批判が伝わってきて大好きです。

エンディングは、ハロルドの前向きな意志を感じさせるアメリカンニューシネマ的な最高の表現だった。カッコいい!

老人が青年に生きる価値を伝えるというありがちな内容を、大胆な演出と緻密な脚本で表現した素晴らしい作品でした✨💕
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