猫脳髄

ハロルドとモード/少年は虹を渡るの猫脳髄のレビュー・感想・評価

4.4
19歳の青年と80歳の老嬢との恋愛関係というスキャンダラスな設定に目が行きがちだが、1970年代アメリカのシラケ・ムードを先取りした見事なコメディ・ドラマである。

厭世的で死の淵をふざけ半分に覗きこむハロルドがナチスの強制収容所から生還し(収容者に施された刺青がほんの一瞬見えるが、そこがまた強烈なシーン)アメリカに渡り、万事破天荒だが人生を謳歌するモードと交流するなかで、自らの生を取り戻すという再生がテーマである。

カウンター・カルチャーが節目を迎え、アメリカがヴェトナム以降、ニクソン以降の虚脱した70年代に向かうなか、ホロコーストを生き延びた世代と戦後生まれの世代が交感し、バトンを渡していくというこの時代でしか映し出せない感性が光る。ロード・ムーヴィーの側面またコメディとしての笑いどころもしっかり盛り込んでおり、おろそかにできない名作に仕上がった。
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