つるまき鳥

ハロルドとモード/少年は虹を渡るのつるまき鳥のレビュー・感想・評価

5.0
2013/11/11
@新橋文化劇場

「L・I・V・E!生きろ!」
その時僕はハロルドで、モードという女性に恋していた。彼女は僕に生きる喜びを教えてくれた。彼女は79歳だった。

東京に来て4年目の秋。当時の僕は留年が決定し卒業の目処も立っておらず、日々をもんもんと過ごしていた。勉強は捗らずやる気も起きず、大学にも行ったり行かなかったり、半引き込もりのような状態だった。かたや同級生たちは就職やら大学院やら続々と進路が決まっていて、一人だけ置いていかれたような気持ち。なかなか遊びにも誘えなくなっていた。映画でも見に行こうかと、ふと訪れた名画座でやっていたのがこの作品だ。

主人公のハロルドは19歳。裕福な家庭に生まれたが、母親の愛情に飢えて自殺ごっこに興じる。彼と出会うのはモードという変わったお婆さん。霊柩車をぶっ飛ばし、電車の中に住んでいる。明るく無邪気で少女の様だ。ハロルドとはまるで正反対。二人の関係を軸に主体的に生きること、自立することの大切さをユーモアたっぷりに教えてくれる作品だ。

「毎日何か一つ新しいことをするのよ。そのために生きるの。」

モードの何気ない台詞ひとつひとつが力強く胸に響く。

鑑賞後、色んな気持ちが迫ってきて泣いてしまった。現状。将来。親との関係。溜め込んでいたものが一気に溢れ出した。一頻り泣いた後、今度は胸の奥から力がこみ上げてきた。頑張ろう。劇場を出る頃には明るい自分になっていた。

今年、やっと卒業研究につけることが決まった。なんとかここまでやってきた。次は就職。夏には採用試験がある。モードのようなポジティブなパワーで乗り越えていきたい。