櫻イミト

男の敵の櫻イミトのレビュー・感想・評価

男の敵(1935年製作の映画)
2.0
フォード監督の初のアカデミー賞監督賞受賞作。原題は「The Informer(密告者)」。フィルム・ノワール風なドラマ。

アイルランド1922年の春。無知な男ジポー(ヴィクター・マクラグレン)は金のために友人を密告し死に至らしめるのだが。。。

起承転結の転がないストーリーで途中は足踏み状態が続く。冒頭に聖書のユダの引用があるが宗教的な深みは感じられない。人間の愚かさを打ち出す物語ならば、もっと演出の仕方があると思う。

光りと影を使った映像は非常に素晴らしい。本作の撮影監督ジョセフ・オーガストは、初期はウィリアム・S・ハートの傑作「鬼火ロウドン」( 1918)「曠原の志士」(1925)、後に「ノートルダムの傴僂男」(1939)「ジェニイの肖像」(1947)などを撮った人物。フォード監督は自身が組んだことのあるベストカメラマンとして、オーガストと「怒りの葡萄」(1940)「市民ケーン」 (1941)を撮ったグレッグ・トーランドの名前を挙げている。

※本作の撮影中、フォード監督はマクラグレンを口頭で虐待し、リハーサルだと言ってカメラを回すなど徹底的にからかい続けた。マクラグレンはついに激怒し「フォードを殺す」と脅した(IMDbより)

■フォード監督のアカデミー賞監督賞受賞作
「男の敵」(1935)
「駅馬車」(1939)
「わが谷は緑なりき」(1941)※唯一の作品賞
「静かなる男」(1952)
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