このレビューはネタバレを含みます
古典的傑作ながら決定的瞬間をあえてみせず音によってサスペンスをもり立てていく手法はいまだに効果的で手に汗握りながら鑑賞した。はじめは単なるサスペンスだと思っていたが最後には群衆心理と法の対立にまで発展していく展開は今こそ考えられるべき主題でそういう意味でもまったく古びていない。
強烈な光にさらされて目を見開きながら独白するピーター・ローレ、それをとりまく人々の憎悪に満ちた視線、子供を失った母親たちの空虚なまなざし。それらに立て続けに見つめられる鑑賞者たるわれわれは複雑な思いでこの映画を見終わるのだ。