流之助

十三人の刺客の流之助のネタバレレビュー・内容・結末

十三人の刺客(2010年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

どうしてもサブスクに来ないので円盤を購入。DVD版は荒い画質だったけれど十分に面白かった。再上映とかしないかしら。
映画の尺が長めで、中盤ややダレる流れはあるものの、終盤の殺陣シーンは圧巻のひとこと!
ケレン味が強すぎて笑っちゃうところも味わいかな。
こうした作品は、悪役が酷ければ酷いほど観たあとスッキリするというもの。その点では本当に満点。「山猿の骨は硬いのう」のシーン最高。

そしてなんといっても「みなごろし」の迫力。もっとエグい字でも良かったけど、血の涙を流して叫ぶ女優さんの茂手木桜子さん、名演だった。

出演者はとにかく豪華。さらに殺陣シーンの工夫、刺客たちがガンギマリ眼で散っていくところなど、派手派手しい演出たっぷり。
三池節が特に感じたのは、山男を演じる伊勢谷友介。岸部一徳をあんなふうに使っちゃダメよ!\アッー/じゃん。

とはいえ刀を死闘場所にガンガン立てて闘うのは理にかなっていて良きかな良きかな。ずっと同じ刀で斬っていてはナマクラになるもの。ナマクラ刀で斬られたら、なかなか死ねない。その描写もあってニヤリ。倒れ死にゆく者の目線からの死闘のシーンも良かった。

爆散して果てたシーンでの血しぶきも意味が分からないほどバッシャンバッシャン大盤振る舞い。
スタントも美術も好き。
あの、軍勢を分断する変な竹?の仕掛けやら爆発やら火牛を用いるやら、本当に目が楽しい。

ストーリー的には驚きは少なく、裏切りやどんでん返しはない。
愚直なほどに、凶悪・多数VS必死・少数の点に重きを置いた作りなのがシブい。

しかし、斉韶が侍の自論らしきものを口にしているシーンは、どこか主人公新左の甥の、唯一の生き残り(山田孝之)が抱えていた鬱屈としたものに近い闇を感じた。
立場が違い、周りの者が違えば、両者は同じような道を辿りかねない気がする。
侍は立場で生きる。立場によって生きる道を得る。その立場について昏い疑問を持ったとき、自分を保つことができなくなり、そのまま太平の世を生きることは難しい。
戦乱の世の侍とは違い、戦うことを使命とはしなくなった太平の侍。本来の侍としてのアイデンティティの喪失を抱えた男たちが、闘うしか仕様のない、利己を離れきった心で死出の道をたどる様は非常に面白い。

演者としては、やはり松方弘樹が最高であった。殺陣は言わずもがな。散り際の表情の変化は流石過ぎて…!市村正親も良かったんだけど、サバサバしつつも人情味があり新左をよく助ける役にめちゃくちゃ合っていた。

余計なスローモーションなし。余計なお涙頂戴シーンなし。死ぬ時はあっさり死ぬ。ベネ!

「みなごろし」バサーッ!からの「斬って斬って斬りまくれ!!!」
名シーン。
流之助

流之助