短距離障害物競走のようなコメディ。
ひとつひとつの捻った設定やギャグが長続きしない。
点がバラバラに配置されている印象。
点と点が繋がって線になり、大きくうねる感じがない。
例えば主人公を探るために近づくヒロインが、重要書類を盗むだけでスパイ活動を止める。
主人公も身分を偽っているので、嘘つき同士で捻ったコメディ展開になれば楽しめるのだが、ひとつひとつのシチュエーションをすぐに閉じてしまう。淡泊で味気ない。
それで主人公との恋愛に関しては、別の手立てで発展する。
なんだか二度手間な感じ。
アイデアは一杯あるのだが、誤解から互いの関係や感情がうねっていく感じがない。
会社のリストラ案とは別案で、会社のピンチを救おうと主人公とヒロインが勉強会をして仲良くなるが、彼の提案が潰されそうになるとか、逆転するとかではない。
最後は、まったく別のことで勝つ。
それは水戸黄門的なデウス・エクス・マキナ(都合の良い神)で、彼の提案は関係ない。
色々アイデアは出すが、出しっぱなしで物語のうねりにならない。
恋愛にしろ逆転勝利にしろ、最初に出した展開とは違うものを急遽用立てて、それでしのいでいる感じ。細切れ感がある。
結局、スタイルとしては『成り済ましコメディ』と『立身出世コメディ』の融合なのだが、どっちつかずになったかなと思う。
NY版『無責任男』、クレイジーの方が早かった!
うねりのある長距離走が見たい。
短距離走の連発は好みじゃなかった。