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神々の深き欲望のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

神々の深き欲望(1968年製作の映画)
3.7
南海の孤島クラゲ島(モデルは沖縄)琉球神道が信仰されている島。
ここにはサトウキビ工場がある。
水質調査に検査技師が訪れ、それを境に島の発展と島の風習との衝突、ケダモノと蔑まれているのに島の神事に欠かせないノロの一族、様々な対立構造が浮き上がってくる。

・太山盛→根吉の父親。
・太根吉→主人公。妹ウマと好きあった罪を贖うため足枷を嵌められたまま20年間穴掘りし続けている。
・太ウマ→根吉の妹、島の区長・竜の妾。神の声を聞くノロ(巫女)
・太亀太郎→根吉の息子。
・太トリ子→亀太郎の妹。知的障害がある。
・刈谷→東京からきた測量技師。

太家は神につかえる一家ながら島の人間からは「ケダモノ」と呼ばれている存在。
山盛は自分の娘と近親相姦し根吉が産まれ、根吉は実の妹のウマと恋仲になり、結果20数年間罪の精算のため穴掘りを続けていて。
また亀太郎とトリ子も危うい関係。

太家に近親相姦が巡るのは血筋ということもあるんだろうけれど島に伝わる伝説『最初に兄と妹がいて……』の語り唄を聞いていると、古事記にある伊邪那岐、伊邪那美(兄妹の解釈も有)の国産みを思い出す。
『お互いに柱の周りをぐるっと回って、あなたの体の足りないところに私の体の余分なところを刺し塞いで国産みましょう(超雑)』
それが、根吉とウマの執着と恋慕の因果なのか、神事を担う一族が理性ではブレーキのかけられない本能の血のせいなのか。

一方で、島の「ノロに相談しないと伐採は出来ない、水質調査のボウリングも妨害が入って進まない」ことで、すっかりやる気を失くした刈谷は、天真爛漫ほぼ野生児なトリ子に溺れ、仕事を放棄するように。

区長の竜は、この状態は島の人間から不満が爆発するし本土の会社から島へお金が流れないことを懸念して裏で工作をする……ある意味で島の発展のための必要悪という存在。

孤島で信仰され続いてきた風習が島の発展により薄れゆく話のようでもあるし、
都会から島にきて、現地の女性と恋に落ち、しかし「戻ってくるよ、信じてくれ」といって都会に帰り、女は待ち続け、男は戻らぬという話でもあり(刈谷クズや……)

そして長年夫の妾・ウマの存在が疎ましく、あまつさえ腹上死した夫。
ウマと根吉に「あとはうまく説明するからふたりは逃げろ」と言い、一方で島人には「夫は根吉に殺された、ウマと一緒に逃げた」と言う竜の正妻・ウナリ。その結果島人総出(息子も)である掟を決行する。神より人間のやることの方が怖くないか……?

今村監督作らしいな……と思いつつ観てたら、Wikipediaに今村リアリズムの集大成とあり。
読み進めたら、撮影当時の監督の下半身情報も暴露されていて(……撮影以外に、他にやることもなかったんだろうな……)と思ったりしました。