HidekiIshimoto

神々の深き欲望のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

神々の深き欲望(1968年製作の映画)
4.0
波照間島が舞台だったと知りいそいそ観た。薄れゆく慶良間旅行の記憶を甦らせようとあせって観た。観たらタイトルの『神々』って神殺しで世界を乗っ取った俺ら人間のことか、つまりエボシさまかと思った。ラストで島暮しに鬱屈して上京し、けど出戻った若者が「島の方が苦しいけど東京にいると自分がバラバラになるようでたまらんのです」とか言う。島帰り直後の俺はあの青い島々と比べるとこっちはドブだと感じた。もちろんドブにも必死に適応して生きてる生態系があって、今村昌平はそんな生態系それぞれの必死をこんな風に観察する人なのだった。沖縄映画の金字塔『ウンタマギルー』同様これも神話的島映画なんだろうけど、ウンタマが神話世界の中からの映画なのに対し、これはドブ視点からの映画って感じ。去年行った石垣島で出会った初老の漁師さんは「昔と比べると海の透明度はずいぶん落ちて魚も減った」と話してくれた。「昔」とは思えばこの映画が撮られた頃。つまりどこもがドブ化の途上で、未来にはナウシカの世界が待ってる…とまた思ったけどあれも一つの神話。けど神話をなくせばドブになる。