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戦場にかける橋のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

戦場にかける橋(1957年製作の映画)
3.9
ピエール・ブールの小説「戦場にかける橋」(Le Pont de la rivière Kwaï)をデヴィッド・リーン監督が映画化した戦争ドラマ。
アカデミー脚色賞をブウルが受賞したが、英語のできないフランス人のブウルが脚色できるはずがない。
実際に脚本を書いたカール・フォアマンとマイケル・ウィルソンが赤狩りのブラックリストに載り本名でクレジットできなかったためだが、死後の1985年に名誉回復している。
口笛のテーマ曲「クワイ河マーチ」(「ボギー大佐」を編曲)がイギリス軍人の精神を表現する。
原題:The Bridge on The River Kwai (1957、2時間41分)

第二次大戦下の1943年、ビルマ・タイ国境近くのクワイ川(映画のヒットにより、現地ではメークロン川からクウェー・ヤイ川に改名)上流にある日本軍捕虜収容所。
所長の斎藤大佐(早川雪洲)は将校を含めた捕虜全員に鉄橋建設の労役を強いるが、イギリス軍のニコルソン大佐(アレックス・ギネス)は、将校の労役はジュネーブ条約違反だとして断固拒否する。
やがて、橋を期限までに完成させたい斎藤大佐から妥協を勝ち取ったニコルソン大佐は、イギリス軍捕虜たちの誇りと尊厳をかけ日本軍から工事の主導権を奪って橋の建設に着手する。
ところが、脱走したアメリカ兵のシアーズ(ウィリアム・ホールデン)がイギリス軍のウォーデン少佐(ジャック・ホーキンス)の指揮のもと、鉄橋爆破作戦のメンバーとして密かに戻ってくる…。

~他の登場人物~
①連合軍の軍人
・軍医クリプトン(ジェームズ・ドナルド)
・看護婦(アン・シアーズ)

~②橋の爆破に同行する主な人たち~
・ジョイス(ジェフリー・ホーン)会計士をしていた志願兵。水泳が得意。
・シャム(タイ)の案内役ヤイ
・シャムの女性/荷物運び(ウィライワン・ワッタナパニッチ)
・シャムの女性/荷物運び(ンガムタ・スパフォン、
・シャムの女性/荷物運び(ジャワナート・プニンチョティ)
・シャムの女性/荷物運び(カニカール・ドークリー)

「だが、主義の問題ということが分からないか。もしここで引いたら、際限がなくなる。ダメだ」
But don't you see it's a matter of principle? If we give in now, there will be no end to it. No!

「君は私に粉薬や錠剤や入浴や注射や浣腸を与えてくれた。でも、欲しいのは愛だけだ」
You give me powders, pills, baths, injections, enemas; when all I need is love.

「いつか戦争が終わる日が来る。その時、この橋を渡る人々に誰がどのように作ったかを覚えていてほしい。奴隷ではなく、兵士、イギリス軍の兵士たちが、囚われの身にもかかわらず作ったことを」
One day the war will be over. And I hope that the people that use this bridge in years to come will remember how it was built and who built it. Not a gang of slaves, but soldiers, British soldiers, Clipton, even in captivity.

「2人とも勇気に酔いしれておかしくなってる。何なんだ。紳士らしい死に方とか、ルール通りの死に方とか。どうやって人間らしく生きるかがいちばん大切なのに」
you're two of a kind, crazy with courage. For what? How to die like a gentleman, how to die by the rules - when the only important thing is how to live like a human being!

「いったい私は何を?」
What have I done?

「狂ってる!狂ってる!」
Madness! Madness!

泰緬鉄道建設のため強制労働に駆り出されたアジア人や欧米の兵士は、マラリアや赤痢などの病気や飢え、過労、銃弾や自殺などで大勢が命を落とした。
映画では日本軍による残虐な戦争犯罪行為に係る描写が弱いという批判があるが、当然だろう。
また、イギリス軍が橋の建設に積極的に携わることは日本軍への戦争協力になるので普通に考えればあり得ないことである。
(但し、作品のテーマのためにあえてフィクション設定をしている)
斎藤大佐の人物造形、現地の女性の描き方など、今見るといろいろ突っ込みどころがあることも否めない。
しかし、デヴィッド・リーン監督は、戦時下での人間の尊厳、戦争の虚しさを3か国の主人公を対峙させ、かつスペクタクルを交えて描き、見ごたえのあるたヒューマン・ドラマに仕上げた。
捕虜になっても尊厳を保とうとするアレックス・ギネスの崇高な姿にはヒューマニズムが溢れている(でも、本当に共感してよいのか? 彼の精神がもたらしたものは何か?と問いを投げかけられる)。
緊迫したサスペンスとスペクタクルを交えたラスト・シーンは、戦争は単なる狂気の世界であり戦場ではすべてが虚無に帰するということを示している。
そして、やはり「クワイ河マーチ」がとてもよい。

デヴィッド・リーン監督作品、私のおすすめ(製作年度順)
①陽気な幽霊
②戦場に架ける橋
③ドクトル・ジバゴ
④ライアンの娘
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