ナツミオ

ヨーロッパのナツミオのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ(1991年製作の映画)
4.0
WOWOW on demand鑑賞

”ヨーロッパの奥深く
  あなたを連れて行こう
   10まで数えたらあなたは…
    もうヨーロッパにいる…”

トリアー監督作品を初鑑賞。
この時代の閉塞した空気感がのしかかるサスペンス。一風変わった作品だが楽しめた〜♪♪

デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督が活動初期に放った“ヨーロッパ3部作”の最終編。終戦直後のドイツ。ある米国人はナチスの残党が絡むテロ事件に巻き込まれる。

・1991年カンヌ国際映画祭
審査員特別賞、高等技術院賞受賞。

原題 『Europa』

1991年デンマーク/フランス/ドイツ/スウェーデン・モノクロ作品113分
監督・脚本 ラース・フォン・トリアー
製作 ピーター・オルベク・イェンセン 
ボー・クリステンセン
脚本 ニルス・ヴァセル
撮影 エドヴァルド・クウォシンスキ
撮影 ヘニング・ベンツェン ジャン=ポール・ムリス
音楽 ヨアキム・ホルベック
出演 ジャン=マルク・バール バルバラ・スコヴァ ヘニング・イェンセン 
ヨアン・レーエンベア 
(ナレーション)マックス・フォン・シドー

(WOWOW番組内容より)
1945年、第2次世界大戦直後、連合軍軍政期のドイツ。ドイツ系米国人レオ・ケスラー(は鉄道会社“ツェントローパ”で車掌見習いとして働く。社長の娘カタリナ(に紹介され、米軍情報部のハリス大佐(と会うが、先方は彼に諜報活動への協力を求めたい気配。やがてレオは社長一家の友人だという男に頼まれて少年2人を列車に乗せるが直後、車内でフランクフルト市長夫妻が狙撃される。少年たちはナチスの残党のテロ組織の刺客で……。

(WOWOW解説より)
フォン・トリアー監督にとって本作は、「エレメント・オブ・クライム」「エピデミック~伝染病」に続く“ヨーロッパ3部作”の最終編。当時は斬新な映像とサウンドのセンスで勝負していた同監督だが本作も高く評価され、第44回カンヌ国際映画祭で審査員賞・フランス映画高等技術委員会賞・芸術貢献賞の3部門で受賞。主演のJ=M・バールは後に「奇跡の海」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」など、フォン・トリアー作品の常連的俳優に。名優マックス・フォン・シドーがナレーションを担当したのも発表当時は話題になった。

第二次大戦後間もないドイツを舞台に、荒廃したドイツ国内でアメリカ人の見習い車掌がナチスのテロ事件に巻き込まれていく姿を、パート・カラーとモノクロの大胆な合成映像を交えて描く。

オープニングから、まるで催眠術のようなナレーション。
声は名優、マックス・フォン・シドー。

夜行列車の前方を照らすレール。
流れる線路の映像。
観客は彼の催眠術に落ちていくよう。

時代は1945年10月。
敗戦国ドイツの荒廃した風景、連合軍に分轄統治されている時代。
旧ナチスのテロ組織 ”人狼” (ヴェアヴォルフ)は実在した組織。(忘備録へ)

戦争直後の荒廃したドイツの風景と人々。
モノクロなので、その色の無い映像は当時を思わせるが、製作年は1991年⁈

ところどころで一部カラーになり、その部分に目がいく様になる、製作者の誘導尋問のよう。

寝台車に乗車する様々な人々。
意外な人物のテロ行為。

観ているうちに、あなたも深いヨーロッパに浸ることになる。
 これは悪夢なのか⁇


↓ 以下、ネタバレ含む
【印象のシーン】
・小津安二郎監督を意識したようなカット
 コミカルな健康診断
 ウガイのシーン
 狭いトンネルを進む蒸気機関車

・前半、列車内で起こるテロ行為。
 手段を選ばない人狼…
 落とした弾丸のアップ

・ハルトマン家の鉄道模型部屋
 走る模型を見つめながら会話するレオとカタリナ。
 ”ケスラーさん、ドイツにささやかな
  親切を示すって
   心を開いてちょうだい”

・四角四面の抜き打ち検査。
 規則に忠実なドイツ人試験官。

・自分の列車に仕掛けた爆弾を解除しようと疾走するジャケ写のシーン。
時が迫るタイマーをバックに疾走するレオの場面は昔のサスペンス映画のよう⁈

・終盤のレオがもがくシーンは、
 『第三の男』『地下水道』のイメージ。

ラスト、シドーのナレーションが沁みる。

 “あなたは目を覚まし解放されたい
  ヨーロッパの幻から…
   だがそれは不可能だ……”

不思議な余韻の作品。



 

【忘備録】ネタバレあり
(人狼)Wikipediaより
・ヴェアヴォルフ(Werwolf)
第二次世界大戦末期におけるナチス・ドイツで、ドイツの連合国軍に占領された地域で連合国軍に対するゲリラ攻撃によってドイツ国防軍を支援するための部隊。
Werwolf (ヴェアヴォルフ)の語は werewolf (英:ワーウルフ、狼男)と同一語源のドイツ語で、 lycanthropy (ライカントロピー、狼化)という意味であり、さらに「戦狼」を意味する Wehrwolf (ヴェーアヴォルフ)の語呂合わせでもある。“Werwolf”は運動の名前として好まれていたが、“Wehrwolf”もしばしば使用された。日本語では「人狼部隊」または「狼人部隊」と訳される。

・ヴェアヴォルフに関連する作品

サミュエル・フラー監督『戦火の傷跡』(原題-Verboten! 日本未公開・1959)
鑑賞、レビュー済


(キャスト)
・レオ・ケスラー Leopold_Kessler
- ドイツ系アメリカ人
- (演)ジャン・マルク・バール

・カタリナ・ハルトマン
Katharina_Hartmann
- ハルトマン家の長女
- (演)バルバラ・スコヴァ

・ローレンス・ハルトマン
Lawrence_Hartman
- ハルトマン家の長男
- (演)ウド・キアー

・Uncle_Kessler
- レオの叔父。”人狼“の幹部。
- (演) Ernest Hugo Jaregard

・Pater
- (演) Erik Mork

・マックス・ハルトマンMax_Hartmann
- ツェントローパ社長。
 ハルトマン家当主。
- (演)ヨアン・レーエンベア

・ジギー Siggi
- “人狼”の党首
- (演)ヘニング・イェンセン

・Colonel_Harris
- 米軍情報部大佐
- (演)エディ・コンスタンティーヌ

・ユダヤ人の男
- マックスに助けられたと証言する。
- (演)ラース・フォン・トリアー

・ナレーター Narator
- (声)マックス・フォン・シドー
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