サカイピロシネツキ

ヨーロッパのサカイピロシネツキのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ(1991年製作の映画)
4.5
カフカの『城』×スティーブ・ライヒの『Different trains』


1945年戦後すぐのドイツが舞台ということで、オープニングの線路の大写しはどうしたってアウシュビッツ行きの列車を想起させられる。しかも、ナレーションが『第七の封印』で死神を演じていたマックス・フォン・シドーだ。

主人公の異邦人ケスラーは、町を彷徨う測量士Kではなく、一直線に行き先の決まった列車に車掌として乗車するが、同乗者たちからの不条理な要求に右往左往させられ、車掌にも関わらず彼がコントロールできるものなど何一つ無い…。
車窓から見えるのは国家権力や歴史に翻弄される群衆。

悪夢のような現実の残酷さを鮮やかに切り出す幻想的で耽美的なヨーロッパ鉄道のバッドトリップへ。

いつもの悪趣味で公私混同な加虐性も抑えめで、ドグマ縛りや実験的要素もほぼなく真っ当に撮られた初期トリアーの傑作。