もこもも

秒速5センチメートルのもこもものレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
4.2
遠野貴樹を主人公に『桜花抄』、『コスモナウト』、『秒速5センチメートル』の3話連作構成で時の流れによる変化を描いた作品

素晴らしい...
懐かしさと切なさが込み上げた
2007年公開を疑うレベルの作画やから
情景描写や心理描写が美しくて
よりセンチメンタルな気分にさせられる
少年時代、青年時代、成年期、
それぞれの心境に共感できる部分もあって
失ったものの切なさに胸が締め付けられた
『One more time, One more chance』が
流れるラストはほんまにめちゃめちゃ良い
観る前は各話別々の話やと思ってたから
話が繋がってたのが嬉しかった

"愛"ではなく"恋"を切り取った作品で
この作品ほど少年時代の恋心と苦悩を
色鮮やかに蘇らせてくれる作品は多くはない
特に『桜花抄』は似た経験があるから
1人で知らない場所に行くことの孤独感、
向かう途中の落ち着かない気持ちに共感し、
あの頃の、決して変わることはないと
信じて疑わなかった恋心に胸を抉られた
変わってしまうことが当たり前やと思っている
今の自分に少し寂しさを感じたりする

「来年も桜、一緒に見れるといいね」

⚫︎第一話『桜花抄』

転校によって離れ離れになった
遠野貴樹と篠原明里の再会を描いた話
積み重ねた手紙と時間と想い
明里の声が優しくて、温かくて好き
取り止めのない手紙の中に込められた
純粋な恋心に胸がきゅんきゅん

明里のところへ向かうまでの
不安とか孤独感とか時間の長さに共感
2人が出会えて良かったと思ったけど...

「堪らなく悲しくなった
 明里のその温もりをその魂を
 どのように扱えばいいのか
 どこに持っていけばいいのか
 それが僕には分からなかったからだ」

⚫︎第二話『コスモナウト』

高校生になった遠野貴樹を
彼に想いを寄せる花苗の視点で描いた話
空の描写が特に美しく描かれてた
花苗の一途な恋心を応援したくなったし、
遠くを見つめる貴樹がとっても切なかった

将来のことなんて分からない
自分のことなんて分からない
どうしたいかなんて決められない
それでも迷い悩みながら前に進んでいく
そんな姿が懐かしいと同時に前に進んでいるのか
分からなくなる時がある自分には眩しくも映った

「彼は優しい、時々泣いてしまいそうになる」

⚫︎第三話『秒速5センチメートル』

大人になった貴樹と明里のその後を描いた話
主題歌が流れるラストがほんまに素晴らしくて
これの為に今までがあったとも言えるレベル
結局今やれる事をやっていくしかない
大人になった今観て良かったと思える作品

「いつかまた一緒に桜を見ることができると
 私も彼もなんの迷いもなくそう思っていた」

主題歌 : 山崎まさよし『One more time, One more chance』
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