ナウ

秒速5センチメートルのナウのネタバレレビュー・内容・結末

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

切ない。切なすぎる。
落ち着いた雰囲気というか、終始儚さを伴った空気感。暖かいシーンでもどこか寂しさを感じる。

登場人物の動きひとつひとつから、当時の今大切だったことや本気だったことへの切なさが溢れてくる。

変わらない、変われない、進めないように見えても、桜の花びらのように、何年もかけて宇宙へ向かうロケットのように、時間は全てを進めていく。
だけど、未来から見たら過去だとしても、どれも本当にあった大切な想いであり、それらの重さ、価値が薄れていくわけではない。

全ての人に今があるけど、同時に大切な過去もある。そう思わせてくれる作品。



3話構成なのは知らなかった。
全シーン良すぎてまとめたようとしたのに長くなってしまった。

1話
高樹もあかりも転校が多かったからか、小学生のときからどこか大人びた落ち着きを持っている。
別れや文通、電車の旅を経て高樹のそれはより顕著になる。描かれてはいないけどあかりもそうなのだろう。
それ故か、1人でいるにしろ実際にはそうでないにしろ、どこか遠くを見るような孤独感が付き纏う。

手紙が飛んでいってしまった時とか泣きそうになるシーン。そのあと止まっている電車でも。時間ははっきりとした悪意を持って僕の上を流れていった。あかり帰っていてくれればいいのにと願いつつも、待っていることも願うような時間。
待合室で会うシーン。ああ、高樹とあかりが結ばれてくれてもいいのに!

2話
花苗が高樹に違いを感じ好意を抱くのも頷ける。中学生、高校生にして、これほどの大人びたというか、憂いを帯びた雰囲気だもの。
そのギャップ故に、花苗と高樹とでは、優しくすること、一緒に過ごす時間ひとつひとつの意味合いが全然違うんだろうな。花苗がそれに気づき始めて(最初から感じていたとは思う)、優しくしないでほしいとか、どこか遠くを見ている、自分を見ていないと感じる。
高樹はずっと止まっているような感覚の中過ごしていたと思うが、花苗にたくさんの影響を与えている。花苗は、高樹も自分と同じように迷っていて、明日のことすらわからないということを知って、自分の中の靄を晴らす。止まっていると感じている高樹の影響で花苗は進み始める。
花苗の目の前のことよりも先に将来のことを考えられない感覚は大切だと思う。何となく将来のことを考えられるようになるのではなく、高樹と話をすることで目の前のことに向き合うを選択をしてくれて本当に良かった。

置いていかれないように、同じになれるようにと、高樹と同じ飲み物を選ぶ花苗。
宇宙を見るロケットのように、遠くを見る高樹と、目の前の高樹を見る花苗の対比。高樹と花苗が結ばれてくれればいいのに!

3話、
あかり、昨日昔の夢を見た。私も彼もまだ子供だった。
高樹、ただ過ごしてるだけで悲しみは積もる。

あかりも高樹も手紙のこないポストを気にして過ごす日々が切ない。
どちらも忘れていないながらも、幸せそうなあかりと止まっているような高樹。
高樹とあかり、どちらも踏切で振り返る。あかりは電車が過ぎる頃には前を向いて進んでいて、高樹はあかりを探している。そこで微笑み、前に進む高樹。

大切だったもの、想いは、忘れるわけではなく、消えるわけでもなく、それでも時間の進みとともに、自身の内に含み進んでいく。
エンディングの本当にどこかで君を探してる感じが切なすぎる。



巨大すぎる人生、膨大な時間に阻まれて?高樹が一歩踏み出せていない。
小学校卒業後あかりが転校した後半年間連絡を取らなかった。取り始めたのはあかり。引っ越し後も、高樹はメールの下書きは書くものの送信できずに月日を過ごす。どれか一つでも送ることができていれば、電話をかけていれば。
踏切で振り返り、前に進む高樹ではあるが、もっと早く振り返ることができていれば、違った話にもなったのではないか!
そこが切なくていいのだけれど、そう思ってしまうハッピーエンド好きな自分もいる。
栃木での別れ際に、手紙書くよ、電話もって言ったのに!
ナウ

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