こーひーシュガー

秒速5センチメートルのこーひーシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

【愛あるところに、喪失あり―――「秒速5センチメートル」】
改めて視聴(2023年9月18日)

僕は何度でも言います。
これはハッピーエンドだと。

二人の男女の恋愛を少年少女時代から大人になるまで追ったヒューマンドラマ。
一度は愛し合った二人がすれ違い、離れ、忘れていく。
男は離れ離れになっても女を深く愛し続けていた。
だが女は違った。男の想いは届かない。
愛し合うにはお互い離れすぎた…物理的にも心理的にも、そして思考的にも…

ラスト、踏切越しに再会を果たした二人。
電車が通り過ぎる。
鑑賞者は電車がいなくなったら向こうに彼女がいてめでたしめでたしだと予想する。だがその期待を見事に打ち砕く。
彼女はいなかった。
そして男は爽やかな表情で踏切をあとにする。

バッドエンドではない。二人(厳密には男のみだが)は過去の恋愛という呪縛から解放されたのだから。
だからこそのあの表情だったのだろう。
これこそがハッピーエンドなのだ。
だから悲しまなくていい。
それが喪失感を描くプロが描いた男女のすれ違いなのだから…