ペンバートン

秒速5センチメートルのペンバートンのネタバレレビュー・内容・結末

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

貴樹が初恋の相手・明里の記憶に囚われ続ける物語。

「桜花抄」で描かれた電車のシーンは誰もが幼い頃に感じたであろう未知の、遠い世界に対する不安が雪や暗闇とともに深々と描かれている。その後、貴樹は明里と会い、一晩をともにするわけだが、これが彼の言う「世界の秘密」であり、雪の降る中で2人だけの世界と言う非現実感を貴樹に突きつける。この非現実的世界に貴樹は閉じ込められることとなり、その後の「コスモナウト」「秒速5センチメートル」へと続く。

「コスモナウト」では過去を見つめる貴樹に対して、初々しい恋をする香苗が対照的に描かれているが、この香苗の存在を以ってしても貴樹は過去から脱出できない。

最終話では、過去にとらわれ、陰鬱とした生活を送る貴樹と、過去を思い出として心にしまい、新たな道を行く明里が対比される。踏切のシーンでは2人の完全な離別が象徴されるが、これが今後の貴樹にとって過去からの解放のための救いとなるか否かで、この作品の評価は分かれるのではないだろうか。

それにしても、最後の山崎まさよしの「One more time, One more chance」は皆が抱いたことがあるであろう虚しい恋心をどストレートで描き出すものであり、貴樹と明里のこれまでとこれからを想像せずにはいられない。