りょう

ラスト サムライのりょうのレビュー・感想・評価

ラスト サムライ(2003年製作の映画)
3.6
 もう10年以上前になりますが、トム・クルーズの主演としては、いまだに異色の作品です。当時は、“ヘンテコニッポン”ばかりの映画業界で、かなりまともな日本の描写だったと話題になりました。やっぱり富士山は登場しますが…。
 ここまでまともな作品になったことは、現地のスタッフとちゃんとコミュニケーションできる渡辺謙さんと真田広之さんの貢献があったはずだと思うし、かなり重要な役柄で池松壮亮さん(子役時代)を再発見できたこともうれしかったです。
 日本の武士道の概念や価値感、さらに明治維新直後での解釈とか、ここで描かれていたものが正しいのかどうかわかりませんが、創作である映画としてそこに固執する必要もないはずです。ハリウッドが日本の武士道に着目して、それをマジメに描こうとしたことに意義があって、あくまで彼らの解釈をどう観るかというレベルだと思いました。南北戦争で原住民を虐殺し、PTSDを患ったのであろうネイサンが、日本で反乱する保守派に加勢するという設定も面白いところです。
 久しぶりに観て思ったのは、日本人の保守的なコミュニティに外国人が不意に混在することで、どんな現象が発生するのかということです。あくまでアメリカ人であるネイサンの視点で描かれるので、彼がいい意味で武士道に感化される過程が物語の中心です。それがエンディングの天皇の判断にまで波及するという設定で、終盤の展開としては興味深いものでした。もう少し欲張るなら、ネイサンの特性や異文化の価値感があの集落の住民に浸透するようなシーンも観てみたかったです。
 この作品のコンセプトではなかったかもしれませんが、日本は当時も現代も異文化をうまく自分たちのものとして吸収しつつ、“共存”ということには拒絶的になりがち(というか下手くそ)です。そうした日本人の深層心理は謎のままですが、そこを追求する作品を外国人のクリエイターの視点で映画化してくれないものかと、最近の日本の外国人政策を想うと、つくづく…(もちろん現代劇で)。
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