まぬままおま

バットマン ビギンズのまぬままおまのレビュー・感想・評価

バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)
4.0
スケアクロウ≒身代わり

『ダークナイト トリロジー』において、重要な概念は「身代わり」なのかもしれない。もはやヒーローが善なる存在として正義を行使することは終わったし、無効だ。だからヒーローにも警察にもなれず、ダークヒーローとして恐怖を与える代わりに街の病理を受苦することしかできない。それは大国アメリカやそこに生きる白人男性の権威の失墜の時代性も相まって受け入れられる価値観なのかもしれない。

警察の汚職が蔓延っている。悪人は堂々と犯罪を行う。ホームレスは対処されない。ゴミは処理されない。街は病んでいる。

そんな闇/病みの時代には、バットマンしか頼りにならないのか。ブルースが株式会社の役人の御曹司であることも何とも危うい気がするが、私にはそれ以外の処方がよくわからない。

別記 スケアクロウ表象(以下、若干のネタバレです)
ブルース→バットマンとして、警察や検事の代わりに悪人を成敗する。それは法外の正義として、全く善ではない。
トーマス・ウェイン→妻の代わりに撃たれる。しかし妻も殺されてしまう。
執事のアルフレッド→トーマスの代わりにブルースを育てる/仕える。
チルの殺害→ブルースの代わりにファルコーニの手下が行う。

そう思うと、不正や犯罪はスケアクロウのために生まれるのかもしれない。生計を立てる代わりに、犯罪に目をつむる。〈私〉は直接関係ないし、誰かが得になるのなら代わりに、悪になり得る行為に加担する。エゴと利他を仲介するスケアクロウ。誰しもスケアクロウになり得てしまうし、それが安直な是々非々論者が蔓延る理由かもしれない。

蛇足
穴に落ちたり、コウモリはブルースのトラウマを担うモノなのね。2→3→1の順番でみたから、ようやく知る。そしてトリロジーの中で一番コウモリみが深かった。
あとラーズ・アル・グールがいたヒマラヤのあそこはなんだ?なんか忍者集団であって、けれど全く日本ではないし、アジアっぽいけれどどこにも存在しない文化で何か面白かった。