Jumblesoul

どですかでんのJumblesoulのレビュー・感想・評価

どですかでん(1970年製作の映画)
4.0
昨年は没後50年を過ぎ、電書が安価で入手できた事もあり山本周五郎の作品を良く読んだ。
人情時代小説が多い作家だが現代小説である『青べか物語』も好き。その流れで『季節のない街』を読んでいたら、連作短編の第一話に架空の市電を運転する少年の話が出てきて、これは黒澤明監督『どですかでん』の原作だと気づいた次第。さっそく久しぶりの再鑑賞。
撮影に一年かけるのは当たり前の黒澤監督だが、東京江戸川区のゴミ捨て場にオープンセットを組んで、僅か一ヶ月で撮影完了した異例の作品である。
初見では今イチ分からなかったエピソードが、原作を読んだせいか良く理解できた。映画と原作は別物という意見もあるけど、本作は原作を忠実に映像化しているのがいい。
沢山出てくる登場人物の中ではやはり乞食親子の話が泣ける。芥川比呂志のデスマスクみたいな顔の平さん、原作の印象そのままのヘアブラシ職人役の三波伸介、そして映画のナビゲーター的な役でもある電車少年役の頭師佳孝と俳優陣が素晴らしい。そして武満徹による音楽は、何度聴いても感動する。
黒澤作品なのに三船、仲代、志村といった常連スターが出てない本作がヒットしなかったのは仕方ない。でも、黒澤監督がスター不在のこの庶民讃歌を作りたかった気持ちが良く分かる気がする。
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