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太白山脈のJeffreyのレビュー・感想・評価

太白山脈(1994年製作の映画)
2.0
「太白山脈」

冒頭、一九四八年から一九五〇年の混乱が進む朝鮮半島。右翼と左翼間の血みどろの粛清と報復が続いていた。住民調査、政府軍の進行、中立者、恨み、小作人たちの反乱、土地をめぐる葛藤、パルチザン、対決、裏切り、人民委員会、戦況。今、兄と弟、敗北と魂よ…本作は趙廷来の長編小説をイム・グォンテクが一九九四年に映画化して監督を務めた作品で、この度初鑑賞したが普通である。どうやら韓国で一九八三から一九八九年にかけて発表され、八十九年に全十巻が刊行されている。朝鮮半島南部の全羅南道の農村地帯を主要な舞台とし、植民地支配からの解放後、朝鮮戦争を経て分断の固定に至るまでの朝鮮半島の現代史を描いた貴重な作品である事には違い無い。楽しくはないが…。日本では六年後の二〇〇〇年にシネカノン配給で初公開されている。本作は一六五分と長いから、原作の三分の二しか映画化されていないようだ。韓国では漫画化もされているそうだ。

さて、物語は一九四八年から一九五〇年の混乱が進む朝鮮半島。右翼と左翼間の血みどろの粛清と報復が続いていた。激突の舞台となったポルギョの街ではテロが繰り返されたが、若い活動家のハソプと巫女ソファの間に身分を超えた愛が生まれた。一方、中学教師であり民族主義者であるキムボムは同族同士の諍いに胸を痛めていた。対立の両者を中立な立場から批判するが、日和見主義者として反共団の闇討ちにあってしまう。争いが膠着状態に陥る中、ついに南北間で戦争が勃発したと言うニュースが流れてくるのだが…と簡単に説明するとこんな感じで、南北分断をテーマにした韓国現在映画は、「シュリ」「JSA」などあるが、まさに本作から始まったと言える。四〇年から五〇年までの朝鮮半島が混乱を極めた時期を韓国映画史上空前のスケールで再現し、監督自身が長い間呪縛されていたと語る分断の悲劇を深く見つめ、激動の時代を生き抜いた人々の姿を浮き彫りにしてみせる。世界的俳優アン・ソンギや監督の常連女優オ・ジョンへなどの俳優陣も圧倒的な存在感を持つ、愛と哀しみの一大映像叙事詩である。
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