真一

激動の昭和史 沖縄決戦の真一のレビュー・感想・評価

激動の昭和史 沖縄決戦(1971年製作の映画)
4.0
 天皇陛下バンザイ帝国(戦前日本)に君臨する「皇軍」という名の狂気の組織。そのカルト体質と沖縄への差別意識を描いた良作だ。「沖縄戦の悲劇」は、起きるべくして起きたことがよく分かる。沖縄県民をさんざん犠牲にした現地軍最高幹部の長勇・参謀長(丹波哲郎)が、米軍への勝ち目はないと見るや「こんな壕にいるのは飽きた。外に出ていって最後を遂げたいなあ」とぼやくシーンに、この映画のメッセージが凝縮されていると思う。

 本作品は、ガダルカナルの戦いで大打撃を受けた日本軍が敗北に敗北を重ねる場面からスタート。追い詰められた軍部は当初、沖縄防衛を最重要目標に据えたが、後に「本土防衛の方が重要だ」との判断に傾き、航空部隊さえ置かない「沖縄捨て石作戦」を演じる。大本営から捨て石作戦を命じられた現地軍(第32軍)トップの牛島満中将(小林桂樹)や長参謀長は、文句を口にしながらも、配下の部隊を次々と突撃させ、あちらこちらに日本軍兵士の死体の山を築く。

 とにかく軍の命令の徹底ぶりはすごい。印象に残ったのは、死傷者を大量に運び込んだ洞窟の中で、女子生徒たちが軍の指導に基づき「換気」を行う場面だ。兵士が換気作業始めの号令を下すと、一列に並び、歌を歌いながら手ぬぐいを振り回す少女たち。こんな「換気作業」に果たして効果があるのかどうかなんて、誰も考えてはいない。とにかく命令だ。軍の命令だ。勤皇精神を発揮し、一心不乱に頑張る彼女たちの姿に、天皇カルト教の底知れぬ恐ろしさを見た思いがする。

 特筆すべきは、渡嘉敷島での集団自決のシーンだ。無辜の住民が軍に強いられる形で無残な最期を遂げる様子を、正面から描いた。「生きて虜囚の辱(はずかし)めを受けず」というカルト指令の非人道性に、誰もが戦慄を覚えるだろう。この悲劇を私たちの記憶に、日本の歴史に残す意味において、この作品が果たす役割はとてつもなく大きい。

 米軍をにらんだ80年前の「沖縄防衛作戦」が連想させるのは、中国をにらんだ現在の「南西諸島防衛強化計画」だ。軍部は当初「沖縄死守」を掲げながら、最後は捨て石にした。では、安倍政権以降続く南西諸島防衛強化計画はどうか。本当に、沖縄を平和な島にするための取り組みなのだろうか。極超音速兵器や巡航ミサイルを沖縄に配備すれば、本当に島の安全は保証されるのだろうか。それとも、本土は今も沖縄を「捨て石」として扱っているのだろうか。こうして現在の沖縄の在り方についても考えさせられるのが、本作品です。ネトウヨ麻生太郎が「戦う覚悟」を叫び戦争ムードを煽る今だからこそ、多くの人に薦めたい一本です。
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