そーた

ザ・プレイヤーのそーたのレビュー・感想・評価

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)
3.4
玉ねぎ

先日「ジェイソン・ボーン」を見たんですが、お決まりの細かく目まぐるしいカット割りにはつくづく度肝を抜かされてしまいました。

このカット割りの多用と対極にあるのが長回しだと思いまして、
長回しが有名なことでよく言及されるこの映画の事がふと頭に浮かびました。

ずっと未鑑賞だったので、
ボーンで酷使した目を休めるためにちょいと見てみようと思いました。

あらら、
冒頭のなが回しで近年の映画で多用されるカット割りに対して苦言が呈されている。

うーん、この時代にボーン・シリーズがあったら何て言われちゃうんだろうな。

大人の事情や腹黒さに満ちたハリウッドの裏側をシニカルに描いたこの作品。

大勢のカメオ出演も魅力的なんだけれど、
ちょっと感情移入しづらい野心的な映画プロデューサーを演じているティム・ロビンスがあっぱれでした。

この人の演技。
大好きです。

何だか無気力で気だるそうな感じなんだけど笑顔がすごくチャーミングで、
表情からは喜怒哀楽が読み取りやすいのに、
恐らく頭の中はそんなに単純じゃない。
とっても繊細な演技。

彼が絵描きに問い掛けるシーン。
「なぜ映画を見ないの?」
すると、
「短い人生ですもの。」
と返される。

皮肉が込められてるけど何だか洒落てるなぁ。

昨今の映画は見るに値しないという、この映画からの痛烈な主張なのかもしれません。

さて、この映画。
大好きなティム・ロビンスも出てるし、
「トレマーズ」のフレッド・ウォードが出てて懐かしかったり、
ウーピー・ゴールドバーグがタンポンを振り回しててぶっ飛んでたり、
ニヤリとする要素はたくさんあります。

でも、基本的に現代の映画産業のシステムを皮肉ってるもんだから、玉葱のように皮肉という皮をめくっていってしまえば後には何も残らないような気がしてしまいました。

皮の甘さや辛味は絶妙なんだけれど、
芯がないので映画としてはちょっともの足りない。

青が基調となってるアトリエのアーティスティックな美しさや、
恍惚としたセックスシーンの幻想的な雰囲気だったりと、
思わずはっとさせられてしまうシーンが中盤に待ち構えてはいるんだけれど、
そんな素晴らしいシーンと全体を貫く批判的精神が僕には反発しあったように見えてしまう。

むしろその対立って監督の意地の悪さを象徴しているように感じてしまいました。

実はロバート・アルトマンは今回が初めて。
まだまだ彼のクセに慣れていないだけなのかもしれませんね。

うん、そんなわけでこの映画。
嫌いじゃないですけど、
観客としては置いてけぼりを食らったような感じがしてしまいました。

まぁ、「ジェイソン・ボーン」の目まぐるしい場面展開にも、若干置いてかれてしまいましたけど。
そーた

そーた