半兵衛

(本)噂のストリッパーの半兵衛のレビュー・感想・評価

(本)噂のストリッパー(1982年製作の映画)
3.4
十代で最初に見たときはストリッパーにはまった痛い青年の話にしか感じられなくてつまらなかったが、大人になって改めて見直すと若い男子が風俗嬢やそれに準じる職種の女性に惚れて通いつめる心情を赤裸々に描いていてこういう経験をしているほど身につまされて切なくなった。そしてストリッパーと主人公の距離がリアルすぎる、主人公がいくら熱烈にアピールしても彼女には商売相手としか認知されず人生の一ページにすら記憶されない所詮虚しい存在。でも青年は彼女の営業フェイスを見れて満足というバカな男の精神。

森田芳光監督は浦和にある場末のストリップ小屋をポップに演出するという才人ぶりを披露し他のストリップ映画にはない面白さが感じられる。でもいつもの森田作品よりウェットなのはストリッパーを愛する青年にウェイトを置きすぎているからか、そんな青年を演じる宮脇康之のいかにも女性経験皆無な演技も味わい深い。風俗産業のなかでいかにもいそうなベテランらしい貫禄と森田監督独特の飄々とした雰囲気をあわせ持つ鶴田忍と金田明夫の名演も心に残る。

華やかな夢から醒めていくようなラストもなかなか良かった、そしてヒロインのグロリアが舞台で流すアン・ルイスの『リンダ』の甘くも切ないメロディーがいつまでも耳に残るはず。
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