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ランボーのmasatのレビュー・感想・評価

ランボー(1982年製作の映画)
3.9
泣き叫ぶラストのスタローンの慟哭。
彼の彼なりな“ヴェトナム”への総括は響く。

2年前に(早くも先手を打った)『エクスタミネーター』(80)のパクリ?と言えなくもないが、それらとは一線を画し、いま観ると単なるアクションと片付けるには、勿体なさ過ぎる豊潤な映画的空間が満ち満ちている。流石、アカデミー・ウィナー。そして次なるシリーズ化に成功しただけのことはある。

冒頭、田舎の湖の近くに降り立つスタローン。かけがえの無い戦友を訪ねて来たが、ヴェトナムに撒き散らした“枯葉剤”の副作用で癌を患い死んでいた。友は黒人だった。やりどころの無い気持ちを目に浮かべるスタローン。“負け犬”の瞳は、まだまだ威力を持っている。心の拠り所を失った茫然自失の彼を、村社会が一方的に暴虐の限りを尽くそうとしていた。

どこへ行っても戦いだ。それは己の呪われた運命との闘いでもある。
一体何のために戦ったのか?彼が守ったこの国は何なのか?
キレの良い映像と過剰なアクションが渦巻く中に的確にコンセプトが響く。

いまや、スタローンの瞳も、ジョン・ヴォイドの瞳も、デ・ニーロ=ウォーケンのそれも、同じに見えた。
戦争は、呪い、だ。人間を深く“破壊”し、生き残ったとて、永遠にその呪いは解けず、へばりついて離れない、人間自らが創り出した“悪霊”なのだ。

いよいよヴェトナムの置き土産、PTSDモノやミッシング・イン・アクションものが、ジャンルムービーと結託する80年代が到来する。

兎にも角にも、この頃のスタローンはホント凄かったんだなあ。クリエイティブにおける絶頂期にあったのが本作だけで良く解る。

また、影の様に登場するトップカットを持つリチャード・クレンナの、個性際立つグリーンベレー上官振りも素晴らしい。バージェス“トレーナー:ミッキー”メレディス同様、後期代表作となった。
こういった忘れ去られつつあるヴェテラン俳優の力を、最大限持ち上げるスタローンの“愛情”も見所の一つだ。
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