MitsuhiroTani

ランボーのMitsuhiroTaniのレビュー・感想・評価

ランボー(1982年製作の映画)
5.0
戦友との再会を求めて彷徨うベトナム戦争帰還兵と、ベトナム戦争とは無縁の保守的な町の保安官の対立が生んだ悲劇。
この後に続くランボーシリーズとは、本質的なテーマが全く異なるという点で、ロッキー同様シルベスタースタローンの極めて奇異な特徴を持つ。 
 ベトナム戦争は米ソの代理戦争であり、米国民全てに支持されていた訳ではない。ましてや米国は広く、国境を越える世界とは全く無縁の人生を送る人々や彼らが暮らす田舎町にとっては、リアリティの無いこと。
そうした保守的な町に、怪しい身なりの得体の知れない若者が独りで現れれば、保安官もああいった行動に出るだろう。
 米国というのはそもそも、英国を中心とした欧州の階級と保守性を抜け出し、新しい自由の土地を開拓し、先住民を押しやってまで自らの価値観を築き上げた国。そして自ら生み出した価値観ゆえに、実は異質なものに弱い、寛容さに欠ける部分もあり、常に新しい差別と偏見を生み出してきた国でもある。そういった意味では、ランボーが敬虔なイスラム教徒であるという設定でもある種同様のストーリー展開は生み出せただろう。
ただ本作は、異質さの本質がランボー自身の持つ価値観や信仰に根差したものではなく、ランボーの風貌と経歴を解釈する側によって妄想されたものであること、またその根源が米国政府自身の軍事施策によって生み出されたものであることが特徴であり、傑作となった所以だと思う。
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