いろどり

ベニスに死すのいろどりのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.4
高校生か大学生のとき以来の鑑賞。当時も感動したけど、今回はその時以上に作品の中の憂いが強く響いた。

「夏の嵐」のフランツ・マーラー中尉が今作では音楽になり、主人公へと昇華した(どちらも作曲家グスタフ・マーラーにちなんでいる)。


美しいものには目がいく。
それは人間の性。
悪いことじゃない。

好きな人のことを考えると思わず顔がほころぶ、人混みのなかでも一瞬で見つけられる、目が合うと頭にカーッと血がのぼる。

誰しも経験のある恋の症状。


狂おしい
狂おしい 
目で追わずにいられない。
後をつけずにいられない。

少年を見る目がだんだんじっとり、ねっとりとしていく。

社会の許容を越えた痛々しさ。
道徳にとらわれない魂が震える瞬間。
そこにこそ真の芸術がある。
やっとたどり着いた本物の美。
老いも恥も飲み込んでひれ伏そう。

今作が後世に語り継がれる名作といわれる所以は、ビョルン・アンドレセンの圧倒的な美しさと映画の芸術性が、主人公の痛々しさを凌駕し、真の芸術の何たるかをマーラーの音色に乗せて漂わせているところにあるのだろう。
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