高校生か大学生のとき以来の鑑賞。当時も感動したけど、今回はその時以上に作品の中の憂いが強く響いた。
「夏の嵐」のフランツ・マーラー中尉が今作では音楽になり、主人公へと昇華した(どちらも作曲家グスタフ・マーラーにちなんでいる)。
美しいものには目がいく。
それは人間の性。
悪いことじゃない。
好きな人のことを考えると思わず顔がほころぶ、人混みのなかでも一瞬で見つけられる、目が合うと頭にカーッと血がのぼる。
誰しも経験のある恋の症状。
狂おしい
狂おしい
目で追わずにいられない。
後をつけずにいられない。
少年を見る目がだんだんじっとり、ねっとりとしていく。
社会の許容を越えた痛々しさ。
道徳にとらわれない魂が震える瞬間。
そこにこそ真の芸術がある。
やっとたどり着いた本物の美。
老いも恥も飲み込んでひれ伏そう。
今作が後世に語り継がれる名作といわれる所以は、ビョルン・アンドレセンの圧倒的な美しさと映画の芸術性が、主人公の痛々しさを凌駕し、真の芸術の何たるかをマーラーの音色に乗せて漂わせているところにあるのだろう。