シチリアの漁村に暮らすヴァラストロ一家の長男ウントーニ(アントニオ・アルチディアコノ)は悪徳な仲買人に反発し、独立して取引する漁師となるが、嵐ですべてを失ってしまう。やがて恋人に捨てられ、弟は裏社会に入り、祖父は入院してしまう。
搾取される漁師たちを描いたルキノ・ヴィスコンティ監督作品。
とにかく長回しで、魚の売り買い、家族の生活、進水式などを記録映画のように見せる。これぞネオ・レアリズモ!というか、ほとんどドキュメンタリーを観ているようだ。
白黒映像のせいもあって、素晴らしいはずのシチリアの海も美しさは微塵も感じられず、ただただ辛い闇にしか見えなかった。
そんな静かな骨太作品に寝落ちしそうになったけど、逆に終盤はあまりの救いのなさに目が覚めた。
最後の最後までかなりの胸糞映画で、ラストも自分には希望の再出発には見えなかった。
家族の在り方や搾取の方法はだいぶ変わっても、経済的迫害が組織的におこなわれるのはどの時代も同じ。現代の富裕層の一人勝ちを思わせる。
同時に世代間の意識の差も印象的だった。成功したかどうかは別として、時代を動かそうとするのはいつも若者だ。
面白いかどうかではなく、この家族それぞれが見せる悲哀を丁寧に映すことで映画として成り立っているところに価値がある。