Aki

群衆のAkiのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
4.0
同監督の『スミス都へ行く』では、中身のなかった凡庸な青年に託したある種の無邪気さがあった。そして政治への熱意は伴うもののその無邪気さは最後まで変わらずに、寧ろそれでもって周囲を変えていた。

今作の主人公ジョンドゥーは当初は同じような出発点のキャラクターだが、ヒロインが作ったスピーチによって、また、彼を支持する群衆によって内面が変わっていく。


新聞社を買収した新社長に程よく利用され、ジョンが大きくしたクラブを奪われそうになり真相に気づくが、ここで大衆を操作しているのが『スミス〜』においても本作においても新聞即ちメディアで、それによって簡単に扇動されてしまう危うさがあるなと思った。
主人公の相棒が、終始そういった大衆(たかり屋)を毛嫌いしていることからも本作の態度が見える(とはいえ言い過ぎ感もあって、各々生き方は自由にせよ、金も立場もないのは現代ではしんどそうだと思うが)。

一方で、未見だけどキャプラのフィルモグラフィには戦争のプロパガンダ映画もあるのでその点はなんというか興味深い。


群衆の一員でしかない自分には感動的なエンディングに見えたが、実際には以上の点を踏まえると、単に良いとは言えない気持ちにもなる。
また、『スミス〜』でも本作でも隣人愛が通底して描かれており、それはしかし1番大事な理想だなと思った。中盤の、支持者が尋ねてくるシーンは感動的。


冒頭のリストラ宣告から一転、早口で喋りまくりながら特ダネを書き上げて社内で大暴れするヒロインとか、呑気にホテルで野球ごっこしているシーンなどは微笑ましくて素敵。あと、ヒロインへの気持ちを決めたジョンが母親に想いを打ち明けるシーンの切なさも良い。思えば、その雰囲気からの結末へのギャップはすごいな。
まさに邦題通りの、群衆が集まる大会シーンは迫力があって最高。
Aki

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