そーた

横道世之介のそーたのレビュー・感想・評価

横道世之介(2013年製作の映画)
4.5
記憶に残したい映画

人の記憶。
何かの拍子に呼び覚まされて、懐かしくなったり楽しい気持ちになる。

記憶の粒が弾けたかのように、パーっと頭のなかに昔の雰囲気や当時の感情が拡がっていく。

でも、僕たちは決して思い出の地点へ後戻りする事はできません。
それを想うとどこか心寂しい。

あぁ、でも、だからこそ美しいんだ。
だからこそかけがえが無いんだ。

そんな事を強く感じた映画。

横道世之助と彼に関わった人達との思い出をベースに、過去と現在のエピソードを織り交ぜて描かれた作品。

横道世之助を演じた高良健吾。
とてつもなく良かった。
"人柄"という言葉を体現するかのような、
横道世之助という暖かくてまっすぐなキャラクターにピタリとはまっていました。

そして、吉高由里子のお嬢様っぷりも圧巻。
絵に書いたようなお嬢様感を出していながらも全然嘘臭くない。
彼女の演技力、底知れないです。

こんな二人の恋愛模様を中心に据えて、世之助と様々な人との交流を描いていくこの映画。

どのエピソードもなんだか自分が経験したかのような鮮明さで記憶に残り、だかこそそれらが思い出のように感じられるんです。

そしてそれらを思い返そうとすると、実際に僕が経験した本当の記憶までをも呼び覚ましてくれる。

大学やバイトに恋愛。
僕もかつて主人公達と同じような時代を駆け抜けました。
現在は、懐かしいという感情抜きではそんな時代を振り返れないくらいの時間の隔たりがあります。

その隔たりを越えて人が記憶を辿っていく作業。
甦った記憶が自分にとってかけがえのないものであるならば、何とも言えない幸せな気分に浸れます。

そして、ふとしたきっかけでそんな記憶が呼び覚まされてしまうからこそ、人生って面白い。

この映画はそんなきっかけに満ちていました。

だからこそ、いつまでも記憶に残しておきたい映画。
また数年後に見返してみようと思います。
その時、思い出す出来事はもしかするとこれから経験することかもしれません。

映画と付き合っていくのっていいものです。
そーた

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