ドイツを代表する劇作家ブレヒトが18世紀イギリスの戯曲をヴィクトリア朝ロンドンに時代設定を移して翻案した有名な作品の映画化。舞台がイギリスだけど皆ドイツ語なのがちょっと新鮮で面白い。
女たらしの悪党メッキーがロンドン中の乞食を束ねる“乞食王”ピーチャムの娘ポリーと結婚したために起こる大騒動を描く猥雑ピカレスク。
資本主義社会に強い懐疑心を抱いていたブレヒトならではの強烈な風刺が見所(乞食商会で莫大な利益を上げるピーチャム、警視総監のティガー・ブラウンがメッキーと親友関係というのが良い例だろう)。
オペラと銘打っているが、厳密にはオペラとミュージカルの中間に位置する作風ながら名曲が多く、とりわけ「メッキーメッサーのモリタート」は、後にジャズのスタンダードナンバーとなる「マック・ザ・ナイフ」の原曲であり、ジャズにはない大道歌ならではの妖しい雰囲気が堪らない。
ロッテ・レーニャの歌う娼婦の唄も良し。
概ね原作をそのまま映画化しているだけなのだが、ブレヒトの戯曲版とはまるで違う結末も衝撃。恐らくどちらの結末でもブレヒトの主張は大して変わらないのだろう。
