ジョルスン物語を鑑賞して以来、ずっと観たかった作品。
大スペクタクルや皮肉な脚本がもてはやされる今、この作品を振り返りたい。
描かれるのは父の愛と母の愛。
父の愛は正しさと厳しさ。母の愛は際限の無い優しさ。
それらを一身に受けた主人公の思いは、歌として表現される。
たとえ一度は家を離れた彼にとっても、両親の存在は帰る場所であり続けた。
親の愛は無くなることがない。
そんなシンプルな映画。
世界初となるトーキー映画である本作、歌の力をはっきりと感じることができた。
公開当時、観客は目の前のスクリーンでアルジョルスンが歌う姿に感動したことと思う。
また部分トーキーであり、歌のシーン以外はほぼサイレントであるためセリフは短い。
だが、同時に何かを伝えるのは言葉だけではなく表情や身振り、音楽でもあるのだろう。
今の作品と比べれば、モノクロで音質も良くないのかもしれない。
ただ、余計な演出が無いからこそ際立つ事もあるように思う。