戦争もので、いつもの鮮やかなカラーは封印され、メロドラマ要素も少なめ。でも、まぎれもなく清く美しいダグラス・サークの描く反戦、反ナチス映画だった。原作は『西部戦線異状なし』のレマルクによるもの。
主人公のドイツ兵が2年ぶりの休暇で3週間だけ帰郷する。その間に戦禍の中で芽生えた愛とゲシュタポたちの非道さが描かれる。監督自身も妻がユダヤ人でアメリカに亡命しているので、若きドイツ兵の苦悩は自身に重なるところがあったのかもしれない。
身内や仲間が同じドイツ人によって捕まって殺される。ゲシュタポの行為を憎みながらもドイツ人自体を恨んでいるわけではなく、彼らの思いはどんなに複雑だったろうか。人間の怖さと弱さを描いた結末、美しいラストショットだった。
ロマンスももちろんあって、休暇の間に結婚した若い2人の愛の行方は、美男美女によってダグラス・サークらしい純粋さを持って描かれています。
爆撃シーンも多いし、火の中を逃げる様子や戦禍の廃墟の描写もリアル。キンスキーがチラッと出ててビックリです。