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今夜、列車は走るのaiのレビュー・感想・評価

今夜、列車は走る(2004年製作の映画)
4.1
アルゼンチンはかつて鉄道王国でもあり、中南米の中でも例外的に地下鉄も含み鉄道網が整備されていた。

日本でもお調子者元総理が、アメリカの言いなりで外資を呼び込むために、郵政民営化なんぞしやがったが、アルゼンチンでは道路輸送の需要超過の陰で鉄道投資の赤字と衰退は続き、国内貨物輸送の鉄道のシェアは7%にまで下がっていったそうだ。
そこで鉄道を民営化したのである。
その結果、地下鉄と観光用鉄道を除く路線がほぼ廃止、大規模なリストラが断行され、90年代前半に実施された民営化の前後に90%の鉄道労働者が職を失った。鉄道民営化は国家の影響力など含め、アルゼンチンという国の崩壊を象徴している。
富める人はますます富み、貧しい人はますます貧しくなる。今の日本も同じであるが、アルゼンチンの貧しさは比較にならないであろう。

色々と薀蓄を並べたが、ぜひこの背景を知って鑑賞してほしい。
この作品はリストラされた鉄道員と、その家族が苦しい日常を淡々と生きているリアルな姿が描写されている。ハッピーエンドではないが暗いだけじゃない、子供たちがその現実を受け止めながらも、小さな抵抗・希望が感じられる映画だ。
国家に翻弄される国民、富と権力しか考えられないバカな政治家は、どこの国でも同じなのだ。
ハリウッドでは絶対に作れない映画であろう。
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