今夜、列車は走るの作品情報・感想・評価

『今夜、列車は走る』に投稿された感想・評価

菩薩

菩薩の感想・評価

3.6
ケン・ローチの『ナビゲーター』とほぼ同じテーマ、鉄道の民営化により職を失う事になった元鉄道員達のその後を描く群像劇。ある者は早々に自ら命を絶ち、ある者はオンボロの車を転がしタクシー運転手の真似事の様な仕事に付き、ある者は補償金をチラつかせながらサインを迫る「自主退職」の書類を頑なに拒み職場に居座り続け、ある者は犯罪に手を染め、遂には元同僚同士が銃口を向け合う事態にまで発展してしまう。出口無き絶望的な状況に追い込まれた人間がそれでも希望を捨てずに生きて行く為には、最後には監督の強い意志の元この出口無き物語に細い細い出口が築かれる。職業を剥奪される事は即ち人間の尊厳を剥奪される事に等しく、容赦無き新自由主義の波は最も容易く格差と断絶を生み豊かなコミュニティを破壊していく、ってのもケン・ローチのアプローチにかなり近い。実際2000年代前半の絶望的なアルゼンチンの国家的経営破綻の中でも諦めず完成に漕ぎ着けたのだから素晴らしいし、そんな監督が次世代に託した希望のメッセージは強い、良い映画です。
Shizka

Shizkaの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

まずは超絶早口アルゼンチン語を英語字幕で見るところに無理があった。字幕を読むのに精一杯で、ついていけないところ、見れてないシーンが多数。

結果、登場人物を把握できていなかった。あのハゲたタクシードライバーとテレビでインタビュー受けていた人を混同し、なぜこんなにも時系列をバラバラにしてジャンプショットするんだろうか?と疑問に思いながら見ていた、字幕を。

そして、子どもたち。はたしてこの子供たちは彼ら鉄道員たちの少年時代の姿なのかどうかに迷わされた。なんとなく似ている子どもたちだし、喘息持ちの子供の母に見えたし。

最後にはすべてのピースが組み合わさって理解できた、といえば聞こえはいいんだけれど、とてもじゃないが楽しんだ、のめり込んだとはいえない結果に。これ日本語字幕で見たらちゃんと理解できたかなあ。。。

いくらなんでも子どもたちにスポットが当たってなさすぎる、のに、電車を動かして大人たちを仰天させる、というのは無理すぎないだろうか。

大人たちが必死に生きていて、苦難の連続に立たされているために立ち上がる、ならわからなくはないんだけど、結局自殺した父親を持つ少年だけが動機なんだよなあ。

心臓発作で死んでしまったオヤジさんに動かし方を教えてもらっていたとはいえ、運命を変えたいと強く願っていたとはいえ、列車は私たちのものだ!というメッセージが、強いのに弱い。

とはいえある種の熱量がしっかりと伝わってくる映画で、それが原動力でこうやってあとから考え続ける。見終わった後に始まる映画なのかもしれない。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

3.8
「今夜、列車は走る」

冒頭、鉄道とともに栄えたアルゼンチンの小さな街。ある日突然、路線廃止の決定が下される。組合代表、家族や生活、自主退職、新たな職、運転手、警備員、強盗、仲間の死。今、我々の列車は運行する何処までも…本作は2004年に公開されるやいなや、話題を呼んだアルゼンチン映画で、これが長編デビューになった新鋭ニコラス・トゥオッツォ監督の名作をこの度、DVDを購入して初見したが素晴らしかった。主演は「トーク・トゥ・ハー」のダリオ・グランディネッティをはじめ、皆演技派俳優で良かった。トゥオッツォが1990年代に突然民営化の波に押された鉄道員らの厳しい現実を描いた社会派ドラマで、5人の失業した元鉄道員らのそれぞれが抱える問題を映す。

非常にタイムリーな時期に見たなと正直思う。今の日本の経済もGDPが全く成長せず、増税した結果、さらに隣国の災難なウィルスによって様々な人々が失業し、仕事を再開できない今の現状にこの映画は非常に役立つのかもしれない。本作はいわゆる89年に就任したミメネム大統領が親米的な立場から新自由主義を推し進め、規制緩和で外貨を呼び込むとともに、鉄道をはじめとして石油、郵便、ガス、水道など、インフラまで次々と民営化していった結果を映している。記憶に新しいのが小泉政権での聖域なき構造改革即ち小泉構造改革であろう。

賛否両論はあると思うが、デフレを放置したままではその効果は非常に限られてしまう中での民営化は私は進める事はできない…。結果としては民営化されてしまったので今さら何を言っても意味ないのだが。

この映画はセーフティーネットなき民営化で大量の失業者を排出した人々の変わりゆくルーティーンと貧富の格差がどんどん開いていた現場を小さな鉄道の街を舞台に8万人の鉄道員が失業すると言うあまりに厳しい現実をとことん見せつけた力強い作品である。余談だが、1998年に若干28歳でこの映画の脚本を書き始めた監督は、アルゼンチンの国の経済が破綻し、映画が完成したのがそれから6年後の2004年だったそうだ。

この作品はすごく普遍的で、どの時代でもどこの国でも起こりうる事件を取り扱っている。失業してしまい行き詰まった元鉄道員がスーパーで強盗をしてしまったり、そういった昨日とはまるで異なる性質に変えてしまう経済的な打撃を与えてしまう国家に対しての人としての尊厳をきちんと与えてほしいとの切実な願いが入っている様な感じがした。



さて、物語は鉄道を中心に発展したアルゼンチンの山間の小さな街で、ある日突然路線の廃止が決まる。労使交渉を続けた組合代表はその運命を嘆き拳銃自殺する。補償金をエサに自主退職を迫られた組合員たちは次々と書類にサインするが、カルロスやブラウリオら5人の仲間は断固戦う事を決めていた…と簡単に説明するとこんな感じで、今までの日常ががらりと変わってしまう男たちの姿を通して、ぎくしゃくしながらも家族で懸命に力合わせて乗り越えようとする姿が描かれている。

一昔前にイギリスの監督のケン・ローチの作品にもこういった鉄道員の物語をテーマにした作品を見たのだが、それもなかなか秀作の映画だったと記憶している。



本作は冒頭から魅了される。土砂降りの中、3人の若者が疾走する。1人は女性2人は男性。その中の1人の青年が自分の父親が自殺するまでの経緯を語る。カットはその父親の自殺の描写に変わる。彼は遺書のようなものを書き封筒にしまう。そして拳銃自殺を図る。そこで画面が暗くなりタイトルロゴが出現し、葬儀のシークエンスとカメラは変わる。

そうした中、鉄道員の1人がテレビコメンテーターに取材を受け、どうして鉄道員が自殺をしたのかと言う経緯を伝える。そして鉄道員たちが一斉に集まり、今後どうするかを話し合う。そして対立し、それぞれの意見を言い合う。そんな中、複数の鉄道員の家族の描写に移り変わり、それぞれの家庭環境、問題が丁寧に描写されていく。

ある男は、失業し酸素マスクをなしには生きていけない息子と嫁のために懸命に再就職を探す。ある男はお金持ちになると言う口癖を言いながら愛人らしき女性と懸命に試行錯誤する。ある男は絶対に署名なんてしない、断固拒否と貫き、俺は鉄道員だと言わんばかりに鉄道の仕事をしたくてしょうがないようだ。

ある男は家族を養うために懸命に今の現状を突破しようと試行錯誤する。そして父を自殺で亡くした息子のルーティーンを映し出す。会社から父の遺品が届き、その中にある息子宛の手紙を廃車の列車の上で1人読む姿、そこに友人の男女が現れ今後のことを話す。

続いて、元鉄道員の男性の家庭とカメラは移動し、様々な職を懸命に探している場面を会話として写す。夫の失業により、妻が働きに出ている。彼は病気持ちの息子に人形劇を見せる。そして抗生物質を飲ませなくてはいけなかったのに、夫がそれを忘れたと言うことで妻が呆れる。さらに息子の前でタバコを吸い始めイライラし始める妻、街では同じ本鉄道員の男性がチラシ配りをしている。


そして先程の病気持ちの子供の夫婦の場面に変わり、息子の熱を下げるために氷風呂につかる父親、夫婦と息子は病院へ夜行バスに乗り、レントゲンを撮る。カメラは病院へ。カメラは元鉄道員の男が運転手の仕事をしていて慣れない道に狼狽しながらも日々頑張って乗客を目的地へと届けている姿を映す。ここでは不意に犯罪が行われる(内容はネタバレになるため伏せる)。

続いて、先程の病気持ちの夫婦の亭主が、職業センターで色々と受付の女性と会話している。あまりに理不尽な事によりその場で激昂する。続いて、先程の事件に襲われた元鉄道員の男性の車がパンクした件についての描写に変わる。続いてテレビコメンテーターに今の現状を伝えていた男性の場面へと変わる。彼の家は立ち退き命令が貼られてしまい、さらに困難な状況になる。

そして病気持ちの子供の夫婦の場面へと変わり、奥さんが彼が隠し持っていた拳銃を見つけてしまう。彼はホームセンターの警備員の仕事をしているようだ。そしてそれぞれの元鉄道員たちの悲しく悲惨な物語が佳境に入りにつれてどんどんひどくなっていく…。


この映画のメッセージ性ったらすごい…何がって、真っ当に生きていた鉄道員が犯罪者になっていくと言う。それをさせたのは果たして誰なのかを問いている。約2時間近くあるこの映画のラストがなかなか衝撃で正直、びっくりした。エンディングクレジットで真夜中の列車の線路をライトアップしているクライマックスは非常に印象が残るし、突発に大団円を迎えるストーリーもくどくなくていい。

この映画の見所はやはり1994年に路線廃止となったサン・ルイスの無人駅や修理工場を余すところなく使っているところだろう。また、今でも動いてくれる機関車をレンタルして、街の人々をエキストラとして参加させ鉄道の街を再現している点も非常に資金がかかったと思うが、きちんと作っているところは凄いと思う。

そして監督の言葉通りに"せめてラストだけでも希望を垣間見れる映画を作りたい"と言う気持ちがこのクライマックスには訪れている。いつだって物事を先に進めるのは子供だ。

この物語でも3人の子供たちが最後に〇〇をする。それが大人の目に触れて大人たちは最後に立ち止まる。そして子供は最後に立ち上がり、生きていく中で何かが違うと思った時に必ず行動しなくてはいけないと言うメッセージ性が非常に伝わるラストであった。やはり国の破綻を味わった俳優たちもこの作品には文句なしに出演交渉を承諾したんじゃないかなぁと感じる。

この作品は2008年3月にはスペインでテレビ放映が実現するなどかなりの影響与えているようだ。そしてアルゼンチンはもとよりヨーロッパ各国、中東やアジアでも上映されヒットを飛ばしていた。こういった作品が配信とレンタルをされない現状が非常に辛い。セル版のDVDを発売してくれたラテンアメリカ映画シリーズを作ってくれているメーカーには感謝をする。



正直ラストのあの子供たちが行うシーンがなければスコアは3.5止まりだった。だが、あのシーンだけで+3 = 3.8のスコアをつけた。これは物語としても面白いし、非常に楽しめた。結構重いテーマでシリアスな中にユーモアな雰囲気も醸し出しているのも良かったし、お勧めする。
Fe

Feの感想・評価

4.4
あ〜〜〜、最高!!!
主な四人の元鉄道員がそれぞれの色を背負いながら生きている。優しさや素直さはことごとく理不尽に潰されていくし、ひたむきさは全く報われることがない。二枚の布マスクとか払う気のない補償とか文化への無関心とかいったふざけた理不尽にコケにされている私たちが今見なければならない映画だーっ!!
それでも汽車を走らせるだけの勇気を持てば何かが変わるかもしれないし、何も変わらなくても、ふざけた上層部には一生理解することのできない汽車の美しさを胸に生きていくことができるのだ!!!!
胸がいっぱい!
アルゼンチン映画。日本公開当時に観賞。
物語は鉄道で栄えた小さな町が舞台。ある日、鉄道の廃線が決まったことで人々は困難な状況に陥ります。経済的な困難、誇りを失った苦悩。人々は追い詰められ町は閉塞感に覆われていきます。

重く苦しい場面ばかりでなく、所々に散りばめられた日常的ユーモアが重い空気を緩和してくれます。また、登場人物それぞれにそれぞれの愛を感じさせるシーンは力強さを感じさせてくれます。
ミラクルは起きませんが、そこには確かに希望がありました。また、説明のできない熱量があり、見終わった後には胸が熱くなりました。
eri

eriの感想・評価

2.8
新自由主義・グローバル化がもたらしたものを表現した映画。
たしかに経済上は景気回復したのかもしれないけれど、数字以上に失業者が溢れた。実際アルゼンチンでは民営化によって16万人が失業した。職を失っても生きていかなくてはいけない不安、それでも社会は助けてくれない冷酷な現実を突きつけてきて、これが本当にあったとは信じたくない…。
「保険」がどれくらい自分たちの生活にとって大切なものなのか実感した。オバマケアや保険に否定する人々もいるけど、私は自分の大切な家族を守るために絶対に必要な制度だと思う。
この映画の中でも、子供の病気のために吸引機が欲しいけど保険が切れていて中古でも買えない家族が描かれていた。熱を出してもお金がないから医者を呼べなくて自力で氷水で熱を冷ましてるシーンの、子供のうるんだ瞳を見たら絶対に守らなきゃ…!って気持ちに私がなった(笑)
犯罪に手を染めた人の愛人?の人の電話が虚しかった…。みんな誰もが愛されてる。その事実だけで十分なのにお金がないだけで犯罪に手を染めて無残な死を遂げ手をしまう…。お金は大事だけれど、最低限の生活は保障しなければいけないよ…。
虚しい気持ちでいっぱいだったけれど、最後は一筋の希望を見せてくれるシーンで良かった。
新自由主義を経て数字以上に大変な世の中になったけれど、一筋の希望を目指して決して諦めず進んでいく、というアルゼンチンの強い意志が感じられた。いい映画!
えりみ

えりみの感想・評価

4.0
アルゼンチン映画って初めて見た。30代の監督やって!なかなか面白い。
90年代鉄道などの国営事業が軒並み民営化されて安定した職業に就いたとばかり思っていた人達が軒並み路頭に迷う・・・って話。

映画の最後にはちょっとした希望と言うか、自棄になったり死んでまう大人がいるなかで子供達が前向きに行動する姿があって、何となく救われた気持ちに。

登場人物のカルロスとアティリオの区別がつかなくてちょっと混乱。
海月

海月の感想・評価

4.0
良作!!
ラストは熱くこみ上げてくるものがあった。どんな不条理もそれに嘆いているだけではダメだ自分自身も変えて強くならなきゃってメッセージを残したと思う。
それとアルゼンチン人には違和感ないんだろうか、音楽もこの場面でなんでその音?ってなるのも面白かった。
ai

aiの感想・評価

4.1
アルゼンチンはかつて鉄道王国でもあり、中南米の中でも例外的に地下鉄も含み鉄道網が整備されていた。

日本でもお調子者元総理が、アメリカの言いなりで外資を呼び込むために、郵政民営化なんぞしやがったが、アルゼンチンでは道路輸送の需要超過の陰で鉄道投資の赤字と衰退は続き、国内貨物輸送の鉄道のシェアは7%にまで下がっていったそうだ。
そこで鉄道を民営化したのである。
その結果、地下鉄と観光用鉄道を除く路線がほぼ廃止、大規模なリストラが断行され、90年代前半に実施された民営化の前後に90%の鉄道労働者が職を失った。鉄道民営化は国家の影響力など含め、アルゼンチンという国の崩壊を象徴している。
富める人はますます富み、貧しい人はますます貧しくなる。今の日本も同じであるが、アルゼンチンの貧しさは比較にならないであろう。

色々と薀蓄を並べたが、ぜひこの背景を知って鑑賞してほしい。
この作品はリストラされた鉄道員と、その家族が苦しい日常を淡々と生きているリアルな姿が描写されている。ハッピーエンドではないが暗いだけじゃない、子供たちがその現実を受け止めながらも、小さな抵抗・希望が感じられる映画だ。
国家に翻弄される国民、富と権力しか考えられないバカな政治家は、どこの国でも同じなのだ。
ハリウッドでは絶対に作れない映画であろう。
panda

pandaの感想・評価

3.7
初見時の感想が残っていたのでペースト

久しぶりに映画館で号泣してしまいました。
現実を突きつけられるような、それでいて人の情や愛すべき弱さを感じるような映画でした。
アルゼンチン映画なので、スペイン語の切ない響きや映像の色の具合もツボ。
音楽もよかったです。
最後の列車が走るシーンは、思い出すだけで泣けてきます。
決してハッピーな映画ではないです。
でも、たまにはこういうの観ないとなあ。
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