菩薩

アトムの足音が聞こえるの菩薩のレビュー・感想・評価

アトムの足音が聞こえる(2010年製作の映画)
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このところ毎日泣きながらレイ・ハラカミ特集のユリイカを読んでいるので生前の彼の姿を拝みたくて…ってのはまぁ確かに鑑賞理由の一つとしてあるのだが、残念ながら彼のインタビューシーンはたかだか2分程度だし、しかも酒飲んで物食いながら喋ってるから基本何言ってるか分からないって言う(笑)まぁなんともハラカミらしいワンシーンになっている。そんなハラカミ特集号に大野さんも僅かながらアンケートに答えるで形で寄稿してらして、本当はこの映画をきっかけに原神×松雄のセッションが企画されていたらしいと…その直前に惜しくもハラカミは急逝してしまったわけである。

と、これはハラカミの映画ではないので大野さんの話をしなければいけない…。大野松雄と言えば当然アトムの足音なわけだが、個人的には「そこに宇宙の果てを見た」の印象の方が強い、本来音の無いはずの宇宙の音は確かにその一枚の中に存在している。当然の様にシュトックハウゼンから始まり、その後も出てくる名前がまぁ豪華豪華…。と言うかNHK電子音楽スタジオのドキュメンタリーとか撮れないのかね?タージマハル旅行団(小杉武久も逝ってしまった…)はDVDを再発してくださいお願いします…。

と、映画の話をしなければいけない…。音響デザイナー大野松雄の人となりを映し出し、彼の現在に至るまでの活動実績を追うドキュメンタリー、そして彼なりの「プロフェッショナルとは…?」を紐解く謎のNHKテイスト、ってそれがまぁべらぼうにカッコいいわけで。彼の天才ぶりにいい意味で翻弄された人々、そして現代(と言ってもちと前だが)にその血筋を脈々と受け継ぐOpen Reel Ensemble。しかもこの映画の音響効果はパードン木村、ヤン富田筋じゃん!と最後にテンションが上がる。電子音楽好きからしたらきっとたまらない内容。大野さんの充実の日々が伺える笑顔に「適当に適切に仕事をこなす」大切さを思い知る。ハラカミの分も長生きしてやってください、どうぞお元気で。
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