景コマ

怪獣ゴルゴの景コマのレビュー・感想・評価

怪獣ゴルゴ(1959年製作の映画)
4.1
「イギリスのゴジラ」、その異名に偽りなし。全編に渡って凄まじいレベルの巨大特撮が目白押し。ジオラマの規模、ミニチュア、カメラワーク、どれをとっても一級品。破壊描写のバリエーションも実に多彩で、地下鉄に橋にビッグベンにとあらゆるものをド派手に、かつ精巧にぶっ壊す!横に長く続くアパートを親ゴルゴが進撃しながら破壊していくシーンを、逃げる群衆とのカットバックでじっくり映すのは鳥肌もの。

子ゴルゴの実物大プロップもメタ的に活用され面白い。動くし、目も光るし。『2001年宇宙の旅』でもSFXを担当したトム・ハワードの手腕は舌を巻くばかり。炎によって橙色に染まる空の背景は実に美しい。

この怪獣映画の最大の特徴は、人間と破壊を合成の多用によって密接に接続していることにある。逃げ惑う群衆に瓦礫や倒壊する建物が重なるカットが非常に多く、またその合成カットの出来が極めて良い。こうした合成技術の使い方は独特で面白く感じた。また、上記のアパート破壊以外でもカットバックが多く、逃げる群衆と破壊の描写が複数のカットでも接続されている。

ストーリー展開は『モスラ』と酷似しており、両作ともほぼ同時期に公開されているという、この同時性はすごく面白い。親ゴルゴの描写は登場からして『ゴジラ』全開。オチも『ゴジラ』を何となくなぞっているようなクソ適当な文明批判セリフをぶっ込んでいるが、それすら日本の怪獣映画へのオマージュに見える。

特撮技術も演出も極めて斬新かつハイレベル。『大巨獣ガッパ』をはじめ、のちに本家本元の日本にも、多くの影響を与えた。『ゴジラ』から分派した、紛れもない日本特撮の遺伝子を受け継いだ傑作「怪獣」映画である!
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