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フルメタル・ジャケットのtsuraのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
4.0
強烈なクソ地獄がオレらの生きる現実。


ミリタリーケイデンスが強烈だー♪


冒頭のバリカンを入れまくるオープニングの画に卒倒。

訓練の様子はドタバタ劇の様相。

卒業を迎える夜のヒステリック。

まるで何もなかったかのようなベトナム。

本当の最前線の生々しい現場。

戦争の大義。

生きる意味。

自由の意味。

争う事の意味。

いっぱい詰まってる。

ジョーカーの回顧録のようにナレーションに耳と心を傾けながらテレビ画面から映し出される"戦争"に何を想う。


海兵隊が過酷な訓練を潜り抜けベトナム戦争の最前線という泥沼にハマっていく悲しき現実を2部構成にしてとんでもない力技で見せ切るキューブリックにしか成し得ない戦争映画。

強烈な皮肉やリアルな描写というソースでたっぷり味付けした本作は戦争ドラマや反戦映画でなく紛れも無くコメディだ。

ただ不快を通り越して痛快なまでに人が死んでいき、罵り、悲しみ、銃声がこだまする。

劇中を彩る人が達が死ぬ呆気の無さなんてどんちゃん騒ぎみたいで。

でもこの映画が凄いのはそんな狂言回し的な描写のそれが見る者の価値観なり、何かしら心を揺さぶるのだ。

戦争映画を美化するつもりは無いけど…色んな見方があるけれど本作が映像を持って語る言葉は雄弁だと言う意味でいうと見る価値は大いにある。

勿論そのディテールは矢張り監督のこだわりを感じる。
その戦争映画を思わせない作りもあってかギャップは矢張り凄まじいインパクトを残す。

戦線を舐める様に捉えるカメラの動きなんかはキューブリック感がたっぷりあるし、カットの割り方とか…映画の持ってる味も是非噛み締めてほしい。
狂気を語る映画としてテレンスマリック監督のシンレッドラインとかクリントイーストウッド監督のアメリカンスナイパーとかあるけれど狂気という物を測るレギュレータの針は完全に本作が振りまくってる。

ローリングストーンズの「黒く塗れ!」とミッキーマウスマーチが頭から離れない。
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