戦争によって心を狂わされていく様子が、キューブリックらしく表現されていてまたひとつ好きな映画が増えました。
これでもかという酷い言葉を連呼しながら新米兵士を罵倒するハートマン軍曹は悪いキャラとして認識しがちなのですが、よくよく考えてみると罵倒しながらも一緒に走り、罵倒しながらも障害物のてっぺんに自らも登り、極端ではありますが、若い彼らが戦争という重圧に押しつぶされないよう軍曹なりの愛のムチだったのかなと思うとなんだか微笑ましくもなってしまいました。
銃を担ぎ燃え盛る建物を横目に行進しながらミッキーマウスマーチを歌う彼らの足取りは軽いようにも重いようにも見え、きっと感情を殺さなければあの場に立つことさえできなかったのかもしれないと考えると苦しくなります。
戦争とはミスマッチなポップ・ミュージックを流すことで、より戦争の歪さというか歯車が狂っていく感覚を表現しているのがまさにキューブリックで最高でした。
