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フツーの仕事がしたいのcocoapowderのレビュー・感想・評価

フツーの仕事がしたい(2008年製作の映画)
4.3
セメントトラックの運転手が、ユニオンに入り所属する悪徳企業と戦う過程を追ったドキュメンタリー。
まず主人公はとある会社でセメントを運ぶトラックを運転して生計を立ててるんだけど、給料は運んだ量に対して給料が支払われる歩合制でとんでもない残業時間。もちろん歩合制なので残業代はなし。月の労働時間は500時間を超える。ひょんなことから連帯ユニオンの存在を知り加入するも、マジでやくざみたいな奴ばっかの会社の人間がユニオンを抜けろだとか退職届を出せだとかと脅迫。しかも直後に亡くなったお母様の葬儀にまで団体でやってきて暴れる有様。そうこうしてるうちに本人も腸に穴が空いたのと難病を併発して入院。ユニオンの仲間達が彼の会社、運送を手配する会社、そしてさらに親元と会社に労働現場の惨状を訴える。この訴えを受けても、本当に人間とは思えないような鬼畜な反応しかしない人達に空恐ろしさを感じる。職場が過酷であるためにマズローの5大欲求の安全欲求くらいから脅かされた状態なんだろうか。とにかくもうなんか酷い訳で。なんだけど、主人公は仲間としっかりと戦い、最終的には権利を勝ち取る。
という映画なんですが、もう、観てる間ひたすらに何かが喉に上がってくるような、胃がキリキリするような絶望と怒りがこみ上げてくる。きちんと戦わないと正当な権利がもらえないこの状況がおかしいのだが、主人公も言うように感覚がマヒしてくる。ただこの状況はちょっとわかる。その他の職場がどうかわからないと何がフツーなのかがわからなくなる。
フツーの仕事がしたい。この願いを叶えるための一歩を踏み出した。
しかし、主人公の皆倉さんは40代で去年心筋梗塞で亡くなってしまったそうだ。一度身体を大きく壊しているのと、積み重なった過労が影響しているはずだ。
この映画はただただやるせない。ただ、他にも同じ状況にいる人に、その状況は「フツーじゃない」ことを伝え、そしてその状況は打開できるんだ、という強い希望を与えてくれていると思う。

今、主人公の皆倉さんの追悼として、20日いっぱいまで無料配信しているので、興味のある方は監督のブログをご覧になってください。
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