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〈主婦〉の学校のcocoapowderのレビュー・感想・評価

〈主婦〉の学校(2020年製作の映画)
4.5
自分にとっては本当に今観てよかったと思う作品。
こういうのが観たかった、と鑑賞しながらしみじみ感じた。
映画のタイトルになっている「主婦の学校」というのは、世界最北の首都、アイスランドのレイキャビクに1942年に創立された伝統ある学校のことだ。元々は女性のみを対象とする学校だったが、家政学校と改称し、後に男子学生も受け入れるようになった。現在もアイスランド各地から様々な期待を胸に様々な年齢の学生たちがやってくる。
ここは学位のためではなく、学びたい人が自分のために行く学校であり、ここでの生活では、料理、洗濯、裁縫や刺繍、はたまたベリー摘みのワンデイトリップへ行ったり、学んだことが定着しているかを確認する試験や、外部向けにパーティを開いてその成果を披露したりと、様々なことに取り組む。
学校名を改称したことにも表れているが、皆"主婦になるため"に学ぶのではなく、"日々の暮らしを自分事にするため"にここに来る。
何気ない家事こそが生きることに直結しているということがこの作品を観るとよくわかる。ここで学ぶのは最新鋭の家電を駆使したような効率化を目指した家事ではない。実際の暮らしでは、ここまで実践することは難しいだろう。実際に卒業生もここまではできないとインタビューで話していたりする。ただ、それぞれの家事が本来どのようなものなのか、ということを学ぶことはたとえ簡略化した家事をするにしても捉え方を大きく変えるだろうと思う。
男性も参加しているのが印象的だった。性別関係なく、今を生きるための知恵と技術は大切だ。誰もが身に着けるべきものなのだろうと思った。ここでの暮らしは、本当に豊かそのものだった。
作品を観ていてふと思ったのが、もちろん習得する知恵、技術は重要だが、このように普段の暮らしから離れて寮生活をする、ということもまた一つ意義があるのだろうと思う。
というのも、自分は先日、とある事情で2回入院することになった。ずっと続けていた仕事から完全に離れた数日間は何故かデトックスされるような不思議な感覚で、無意識に溜めていたストレスがだいぶ解消されたことに数値を見て気が付いた。
このように、今ある自分の暮らしから離れて、自分と向き合う時間それ自体にも、意味があるのではないかと思う。
こんな学校が日本にもあったらいいのに。男女問わず、人生の中でも貴重な時間になるのではないかと思う。
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