このレビューはネタバレを含みます
この作品は、誰かの魂に灯をともすような作品になるかもしれない。
今でこそ、日本人が日本語でヒップホップ(ラップ)をするのは当たり前で何かイケてるカルチャーになったのは、高校生ラップ選手権やフリースタイルダンジョンで一般の人に触れてもらう機会が増えたから。
それまではアングラでなんか怖い(ギャングスタ)風の人たちが、やるもんでしょとか、変なチェケラッ(以下略)とか言うやつでしょとか下にみられてた時代(2009年公開)に何も持たない地方の若者が、新しい音楽を産み出そうとするエネルギーを表現した、入江悠監督たちのほぼ自主映画
口コミが口コミを呼び、当時の池袋のシネマロサで異例のロングランになった。
そのあと日本語ラップの重鎮である、RHYMESTER宇多丸さんの番組「ウィークエンドシャッフル」内の映画批評コーナー「シネマハスラー」で2009年度の年間ベストになった。
その中でも自らが日本語でヒップホップをやる中で苦労したエピソードなどを交えながら「オレの映画だ」と激賞した。
ラップをやらない僕らが観ても、これは自分がやりたいことに対する情熱をまっすぐに信じた主人公IKKU(イック)の姿に、自分の燃え尽きさせることができなかった「何か」を重ねた人もいたはず。
IKKUは、かっこいいキャラクターでもなく、無職(フリーター)だし、
何も持ってない、何物でもない主人公だ
そんな彼が、だれも知らない、だれにも評価もされない(バカにされている)けども、ヒップホップをただひたすらに信じて生きている。
ラストの
一番ヒップホップとかけ離れた場所で産み出された
「魂のライム」が産まれた瞬間
が他のどこにも存在しない素晴らしいシーンだった。
もちろん低予算で自主制作みたいな映画で映像も演出も色々言いたいこともあるでしょう。
ただ、このシーンが持つ、何かはとても光輝いていたと思う。
自分はアーティストとしてのRHYMESTERのファンだったが、この作品の評論を聞いた後に映画批評家としての宇多丸氏をより一段と尊敬してやまなくなった。
映画評論を毎週ほぼ15年生放送でやってくれることを楽しみにし、映画の感想などを書く、読む、楽しみをくれた作品。
入江悠監督は、この作品から、いまでは多くの映画・ドラマを手掛ける監督となり
出演した、駒木根隆介、水澤紳吾、奥野瑛太さんは入江悠さんの仲間で、今では多くのドラマ、映画のバイプレイヤーとして活躍している
映画として3作、テレビ東京系でドラマ化もされた。
(ん?どっかで聞いた流れ、ベイビーわるきゅーれもまったく同じ流れ)