カタパルトスープレックス

疑惑の影のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

疑惑の影(1942年製作の映画)
3.9
ヒッチコックの通算第31作目(ハリウッド6作目)。1943年アメリカ公開。

『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を片手に鑑賞。"Alfred Hitchcock The Masterpiece Collection"収録のBDです。

トリュフォーも『サイコ』との共通点を指摘しますが、ボクもこの作品が『サイコ』と似てると思いました。ただ、『サイコ』より犯人のヤバい感が薄いんですよねえ。

冒頭にワルツを踊るイメージとともに流れる『陽気な未亡人』が一つの鍵になっています。いまの日本人のボクたちにはあまり縁のない曲なので、これがピンとこないのが少し残念。あと、叔父さんが乗ってくる汽車の黒い煙がプラットフォームを覆い尽くしてしまうのが一つの示唆だったそうで、それに気がつかなかったボクに残念!

ヒッチコック監督特有のサスペンスが生まれるのが後半になってからになります。犯人と犯人を知る人間。この二人の間の暗黙のルール。そのルールのために生まれる緊張感。この緊張感を自然に作ることに苦心したと思います。そのため、汽車で街にやってきてから対決まで、少し冗長な印象を受けてしまいます。銀行で口座を作るとか不要と思えるプロットがあるような気がします。それより、ヒロインの感情のシフトが急すぎる印象。好意から敵意の感情をもっとうまくやってほしかったです。

それでもやはり後半のサスペンスは一流のヒッチコック印です。