緑

刑事マルティン・ベックの緑のネタバレレビュー・内容・結末

刑事マルティン・ベック(1976年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

原作未読
4Kでの鑑賞。

いい顔のオッサンたちの表情/動きと
ディテールを異様に重視したカメラワークを
楽しむ作品。

刑事ものっておもしろくても
観終わったあとに物足りなさを覚えることが多いのだが、
本作ではそれが全くなかった。
というか、ベックが張り込んでいた部屋の
住人が差し出したクッキーがアップになった辺りから
笑いが止まらず苦しんだほど。
なんで誰も笑わないのか!

ツイッギーのミニスカート並に短いニーマンの寝巻き、
脇役刑事の子どものお尻にへばりついたうんこ、
デスク下で脱がれたベックの靴、
マッサージで赤くなったベックの肌、
風呂で泳いで息継ぎしたときのベックの顔、
ルンがコーヒーを複数購入する際に
置き場が悪くてぶつかる紙コップ、
うたた寝してテーブルから肘を落とすルン、
犯人実家で並べられた色柄形の違う皿、
ヘリから降下しようとして犯人に撃たれた警官、
ベック突入の様子を見ているどこぞの奥様、
撃たれたベックがうつ伏せにされ
並んだ細いパイプが食い込んだ顔、
そのベックを運ぶときにあちこちに引っかかる様子、
その他書ききれないほど諸々。
どれもこれもストーリー上は
じっくり撮る必要が全然ない!
丁寧に描くことで浮かび上がってくる何かも
ほとんど見当たらない。
ニーマンの部下宅でベックが煙草を消すシーンは
この吸い殻が後々なにかの伏線に
なるだろうと思うも全く関わってこない。

いやもうすごい!
この作品は刑事ものにありがちな
犯人の心情だとか、
犯人との駆け引きを楽しむものではなく、
執拗なカメラを楽しむもの!
登場してすぐに撃たれてヘリから宙ぶらりんの
顔も映らぬ警官をあんなに追うなんて
笑わせたい以外の意図が思いつかない‼︎

突入するベックがニットの下に防弾チョッキを
仕込んでいないのもおかしいのだけれど、
きっと私服姿のチャーミングなベックを
観客に楽しんでもらうためのシーンだから
それでいいのだろう。

ベックがやられてから再突入をしようとした
刑事のひとりが補助を募ったとき、
ニーマンの部下が手を挙げたのは理解できる。
でも建設作業員、どっから来たよ!
で、採用かよ!
なんだそれ!
もうほんと好きー!

犯人の肩を撃ち頭を殴って気絶させ、
モノクロでアップになった犯人の顔で終劇。
なにこの尻切れトンボ!
犯人の供述もなければ、
ベックの生死もわからない!
ストーリーも主人公も
ディテールを観せるための
ダシでしかなかったかのよう。(褒めてる)
本作のほうが古いが、
手数の多さは三木聡作品に近い印象を持った。(褒めてる)

立ち位置よくわからんまま増える私服刑事たちが
揃いも揃っていい顔にいい表情で、
それも観ていて非常に楽しかった!
緑