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僕のピアノコンチェルトのカポERRORのレビュー・感想・評価

僕のピアノコンチェルト(2006年製作の映画)
4.3

 『貴方は大切なものを自ら手放した
  ことがありますか?』

もしも、自分がIQ180の天才児だったなら、どれ程の孤独やストレスに苛まれるのだろうか?
どんなに頭を捻ってみても想像がつかない。
そりゃそうだ、こちとらIQ2桁の恐竜脳なのだから!(どぅいう脳me?)
だからこそ…私は、ないものねだりで、天才を描いた作品が大好物である。
『奇跡のシンフォニー』『イミテーション・ゲーム』『ボビーフィッシャーを探して』『ビューティフル・マインド』『小説家を見つけたら』etc.....どれもこれも美味ではないか。
我こそは、天才マニアの凡才だ。
そんな数多の作品に登場する天才の中でも、私が最も愛してやまないのが、本作『僕のピアノコンチェルト』の主人公、ヴィトス君に他ならない。
ピアノを弾けば神童と騒がれ、学業においても12歳で飛び級にて高校に進学…と、実に清々しいまでのチートキャラなのだ。
だが、天才ヴィトスはその人並外れた才能故に、周囲からどんどんと孤立していく。
また、見栄張りな両親の過度な期待にも辟易し、人知れずストレスを溜めていく。
自分が進むべき道は、両親の束縛に身を委ね続ける道なのか、それとも自分自身の内なる声を信じてゼロから切り開く道なのか。
ヴイトスは孤独に悩み続けていた。

そんな彼にも、たった一人だけ、良き友であり良き理解者がいた。
家具職人の祖父である。
両親や他の大人たちとは違い、祖父は等身大のヴィトスを愛し、時に温かく、時にユーモアたっぷりに包み込んでくれるかけがえのない存在だった。
ヴィトスは自身の思い悩む姿を、唯一の理解者である祖父に見せる。
「僕はどうすればいいんだろう…」
祖父はそんなヴィトスを見つめてこう言った。

 『決心がつかなければ、大切なものを
  手放してみるんだ。
  一番大切なものを捨ててしまえば、
  きっと新しい何かが見えてくる
  もんだよ。』

そして…ヴィトスは、文字通り自分の一番大切なものを自ら捨て去るのだ。
この作品は、そこから始まる少年の再生と飛翔の物語である。

ヴィトスを演じるのは、実際の天才ピアニスト、テオ・ゲオルギュー。
ラストの圧倒的な演奏には、誰もが釘付けになることを保証する。
そしておじいちゃん役のブルーノ・ガンツも忘れてはならない。
実に味わい深い最高の演技だった。
この素晴らしい天才の成長譚を創造した巨匠、フレディ・M・ムーラーに、心より敬意を評したい。
Danke schön(ありがとう)
merci beaucoup(ありがとう)

P.S.
完全に余談だが、この作品に出会ってなければ、キム・ダミ主演の『The Witch/魔女』のラストに対する私の評価はもっと上がっていたと思う。
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