映画大好きザウルスくん

デッドロックの映画大好きザウルスくんのレビュー・感想・評価

デッドロック(2002年製作の映画)
3.5
刑務所ボクシング王者モンロー(スナイプス)とそこへ新しく収監されて来たプロボクシング王者アイスマン(ヴィング・レイムス)による刑務所ボクシング頂上決戦を描いたスポーツアクション。地味だけど熱くなれる渋い傑作でした🥊

『デッドロック』シリーズと言えばアドキンスの名前を一躍有名にした地下格闘技映画というイメージが強いかもしれませんが、アドキンス扮するボイカが登場するのは2作目以降の話でこの1作目にはボイカは登場しないし、格闘戦もMMAではなくボクシングで行われます。そしてそもそも格闘戦を見せ場とするアクション映画と言うよりは、男たちのプライドを賭けた駆け引きを楽しむドラマ映画としての側面が強いです。

刑務所ボクシングが主題ではあるもののラストの1試合以外はほとんど試合がなく、そのラストの1試合だってファンタジックな派手さのない普通のオーソドックスなボクシングです。メインの2人のキャラクターもどちらかが善や悪に偏って描かれることもなく、どちらも均等に応援したくなってしまいます。確かにエンタメ映画としてこの盛り上がりの無さは大きな欠点だとは思いますが、逆にここまで愚直に1試合への助走を見せられると普通に最後の試合結果がどうなるのか気になってしまい、そのワクワク感のまま最後まで釘付けになって見ることができました。少なくともこのワクワク感は『ロッキー』シリーズでは得られなかったワクワク感なので、ある意味ボクシング自体の魅力は上手く表現できていたのかなと思いました(プロレス好きの僕が言う超ボクシングにわかな意見ですが)。

メインキャスト2人の顔ぶれには何だか違和感があり、まずスナイプスに関しては格闘戦を繰り広げるのは分かるにしても普段パンチ技よりも手を開いた状態での肘打ちなどをメインにしているイメージなのでボクサー役がそんなにしっくり来ず、ヴィング・レイムス(『ミッション: インポッシブル』シリーズのルーサー役の方です)に関しては鍛え上げた上裸を見せてボクサー役をやるようなタイプには見えなかったので驚きが強かったです。黒人王者で細めと太めの2人なのでスナイプスはモハメド・アリ、レイムスはマイク・タイソンをモチーフにしているんですかね(色々と問題を起こして収監される辺りも含めて)。まあこの顔ぶれからしてもやはりボクシングの試合を超人的に描いて楽しませようと言うよりは、ドラマも試合もきっちりと地に足をつけた出来栄えにして手堅い作品にしようとしていることが伺えますね(ヒルは監督デビュー作でチャールズ・ブロンソンを主演に迎えて本作と少し題材が似ている『ストリートファイター』(75)という作品を作っていましたが、正直あっちの方が武骨で熱い男の闘争心が上手く描けていた気がします…)。

色々言いましたが『ブレイド』の直後に本作に出演してボクシングのプロトレーナーに直接殺陣を教わることができたのはスナイプスにとって幸運だったと思うし、もしかしたら本作でプロの殺陣の重要さを知ったから『ブレイド2』の時にドニー・イェンをアクション監督に抜擢したのかななどと妄想も膨らみ、何かと楽しませてもらいました!スナイプスは最後まで強かったし哀愁のある顔つきもマッチしていて、ラストのタイトル回収がバシッと決まったところはもはやカッコ良すぎて感動を覚えたくらいなので、ハードルを上げ過ぎない程度で普通にオススメです🙌