ツクヨミ

荒野の決闘のツクヨミのレビュー・感想・評価

荒野の決闘(1946年製作の映画)
3.8
西部劇=アクションでは非ず、地平線をこさえたショットの力強さ。
西部劇映画ではわりかし有名なジョンフォード監督の代表作の一つらしい本作を見てみた。
個人的にちゃんとした西部劇を見たことが無く、勝手に西部劇=アクションという偏見を真正面からぶん殴るごとく静謐な印象に少々びっくりした。アメリカ西部に生きる人々を映しつつ裏にある人間ドラマを見せていくスタイルがジョンフォードの作家性なのかとも言うべき作品。
なので拳銃でのドンパチはあくまでもバイオレンス、主人公っぽい保安官ワイアットアープにヒーロー感はゼロ。淡々と仕事をこなし最後の見せ場の決闘シークエンスも淡々と銃撃の攻防を見せるのみでもはやドキュメンタリーかと思うぐらい。
だが今作のポイントは圧倒的すぎるショットの数々だろう、わりかしロングショット多めでビシッとした構図をキメるセンス。スピルバーグ"フェイブルマンズ"でも言及された地平性の位置の重要性というか、外ロケでのショットは必ずと言っていいほど地平線が引かれている強気な視線。なのに室内ショットでさえビシッとキメる構図とかやばすぎて映像を見るだけで飽きがこない素晴らしきショットの数々に魅せられた。
いやしかし改めて"荒野の用心棒"のレオーネは引きのショットがうまいし、"ミツバチのささやき"でのエリセは外ロケで地平線をうまいことやってたし、ジョンフォードが与えている影響が実は各方面すごいんじゃないかと感じるほど。ワンショットの凄みだけでここまで引き込むパワー、単純にすごい。
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