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仕立て屋の恋のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

仕立て屋の恋(1989年製作の映画)
4.0
ジョルジュ・シムノンの小説「Les Fiançailles de Mr Hireイール氏の犯罪」をパトリス・ルコント監督が映画化。
音楽はマイケル・ナイマン。ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」のアレンジが使われている。
原題:Monsieur Hire (1989)

仕立て屋の中年男イール(ミシェル・ブラン)は、向かいの部屋に暮らす若く美しい女性アリス(サンドリーヌ・ボネール)の姿を、ただ静かに覗き見ることを日常にしていた。
人から極端に嫌われている(彼も人を嫌っている)イール(原作ではユダヤ人)は、殺人事件の犯人として疑われるが、口を閉ざして何も語らない。
イールが自分の部屋を覗いていることに気付いたアリスは、初めは気味悪がっていたが、 "見られることが好き"とイールに近づく。
イールが自分を愛していると知ったアリスの心は揺れ、2人の距離は急速に縮まる。
距離の接近は、ボクシング観戦におけるアリスの肌への接触により恍惚に至る。エロティシズムが最高頂に達するこの場面は、監督のセクシュアリティの白眉と言える。

「同時に二人の男を?
愛せるわ」

「娼婦とは寝ない。君を愛したから」

孤独で人間嫌いで他人とコミュニケーションが出来ない主人公の一見歪んだように見える恋(純愛)の行方と結末は、見てのお楽しみ。

なお、同じ原作を過去にジュリアン・デュヴィヴィエ監督が映画化しているようだが(作品名は「パニック」)、見ていない。
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