私は、ビートルズが大好きです。
ほぼ全曲和訳まで記憶しており、その歌詞が持つダブルミーニングやトリプルミーニングを考察するほどで、マニアといってもいいレベルだと思います。
そのビートルズの楽曲30曲余りを使用して、ライオンキングなどの舞台を演出した、ジュリー・テイモアがサイケデリックな60年代感満載のミュージカルを演出しました。
父を訪ねてリバプールからニューヨークへ出てきたジュード。
そこで、自由な生き方をする大学生マックスとその妹ルーシーと出会う。
ベトナム戦争が激化していく中、ルーシーは反戦運動にのめりこんでいき、恋仲だったジュードとルーシーと次第にすれ違うようになるのだが・・・
ビートルズ活動時代、ポール・マッカートニーが主導して作ったテレビムーヴィー『マジカル・ミステリー・ツアー』のようなサイケな展開に、反戦ミュージカルの傑作『ヘアー』(1979)のテイストを加えたような作品です。
ビートルズの楽曲をどれだけ知っているかで、本作の面白さが相当変わってきます。
登場人物の名前が、セディだったりプルーデンスだったりしますから。ミスターKやドクター・ロバートやジョジョまで登場。
不法滞在により強制送還されたジュードが、ルーシーへの思い立ちがたく再びニューヨークを訪れる場面では、伝説のルーフトップジャムの再現を試みようとしている。
ビートルズに関する小ネタがあちこちにちりばめられているので、拾い上げることができるネタが多いほど楽しく観ることができる作品ですね。
ジュードとマックスがすむ下宿の家主で歌手のセディは、どこかジャニス・ジョップリンを想像させるし、黒人ギタリストは、ジミ・ヘンドリックスを思わせる。
オリジナルの素晴らしい楽曲を、テイモア監督は独特の感性でミュージカル化しており、いい場面もたくさんあります。
特に『Strawberry Fields Forever』のシーンは強烈で、壁にたたきつけられる怒りの赤色が感情の爆発を表現しており、しかも切なさを感じさせる印象的なシーンでした。
序盤は、陽気なハイスクールものの雰囲気で始まり、途中で『マジカル・ミステリー・ツアー』のようなサイケシーンになり、クライマックスは『いちご白書』(1970)のような怒れる若者ものになっていきます。
吹き替えなしで歌われる役者の皆様が皆さまお上手。特にセディ役の歌唱は圧巻。
『All need is Love』でエンディングになる本作。反戦メッセージを強く感じますが、ジャンル分けすると、ノスタルジィ映画なのではないかと思いました。
本家ビートルズにとても思い入れのある私でも、違和感なく受け入れることができ楽しめました。
エンドクレジットで流れるまさかの曲に、ビートルズ愛を感じました。