まみこwith餅さま

灼熱の魂のまみこwith餅さまのネタバレレビュー・内容・結末

灼熱の魂(2010年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

内戦、宗教間の抗争、もろもろの社会情勢が生んだ悲劇を、ミステリー仕立てで伝えています。

力作であることは間違いなく、観客が唖然とするラストまで、張りつめた空気がみなぎっています。

悲劇を根絶するには、まず知らなければならない、という制作意図もわかりますが、ナワルの強さに驚くのと同時に、物語に大きな違和感を感じてしまいました。

⚠️以下は、この物語に感動された方はパスしてくださいね。せっかくの感動に水をさすかも💦





一番の違和感は、最後に感じるのが「母の深い愛」ではなく、子供達に課した重すぎる十字架であるという点です。

プールで泳ぐほど健康だったのに、真実を知って精神的な衝撃に耐えられなかったのだとすれば…

拷問にも、数々の非道にも耐えてきた彼女が生きる力を失うほどの衝撃を、愛する子供達に与えるだろうか?

あんな事実を突きつけられたら、通常の神経では乗り越えられないと思います。

健康で優秀な子供達。
長男は過酷な日々を越えて、プールサイドで寛ぐことのできる生活。
双子は恵まれた環境で才能を活かしている模様。母親の愛情不足を感じていることを除けば、未来へ進む力を持っている。

そこに爆弾を投げ込む親はいないでしょう。
それこそ墓まで持ってゆく秘密にすると思うのです。

暴露しようとする者があれば、生命を賭して阻止するだろうと…何がなんでも子供の心を守ろうと必死になるはずです。

この物語のように、なかば強制的に自分の過去を追体験させ、知りたくない事実を突きつけるなんて、まるで復讐か呪いのようではありませんか。
しかも状況的に公証人が口述筆記した手紙。
あんなに心身耗弱していて、そこまで手の込んだことをするでしょうか。

手紙には「愛している」と何度も書かれていますが、言葉だけではなく、子供が愛されていると受け取れる行為がなければ、身勝手な言い訳に聞こえてしまいます。

双子に関していえば、妊娠中、自ら堕胎しようとしていましたし、カナダでは安定した暮らしの中で共にいたのに、慈しみが不足していたこと。
出生の経緯にも、愛ではなく彼女の無鉄砲さが感じられます。
せっかく祖母が命を救い、恵まれた教育が受けられる環境を与えたのに、自ら過激派の手先となって暗殺を行い、祖母も寄宿させてくれた親戚をも、何重にも裏切っています。
その挙句、生を受けたのが双子なのですから…

長男については、祝福されないのがわかっている相手と一線を越える際に、子供のことなどは考えてもいなかったでしょう。

遺言により子供が謎解きの旅をする、という巧いシチュエーションですが、以上の点から、もう少し設定を変えて欲しかったと思いました。

ナワルは隠そうとしたけれど、やむを得ない事情から子供達が自ら調査をはじめた、とか…

私が軟弱な人間だからそう思うのかもしれませんが……(_ _).。o○

このストーリーでは、母という名の暴君に振りまわされる子供達の悲劇と感じてしまいます。
脚本があまりにもあざとい。
「母の愛」ですべてを感動的な逸話にしようというのであれば、愛とは何かについて、私の理解とは違いすぎていました。
この映画での愛は私にとっては暴力の呪いです。